上野原から奥多摩へと抜ける県道に沿って連なる目立たない稜線の上に坪山があります。交通の便に恵まれないこともありハイキングの対象としては訪れる人も少なかった山域ですが、ヒカゲツツジやイワウチワの咲く山として登山道などの整備が進んだことから、ガイドブックなどにも度々登場する山となっています。
一宮神社近くの駐車スペースからは一度びりゅう館に向かいます。途中にクサノオウやカキドウシ、スミなどの春の花が咲いています。
この地域の物産などを販売しているびりゅう館の脇から、雑木林の間を登っていく急な坂道が始まります。ジグザグを繰り返しながら稜線にたどり着くと左手に阿寺沢への道が分かれています。
分岐から少し登ったところで一休みしたのち、まだ芽ぶきも始まっていない稜線上の道を登っていきます。小さなアップダウンを繰り返しながら尾根道を登って行きます。右手に長く連なる稜線は三頭山から続く笹尾根、左手には権現山の稜線が続いているようですが視界はあまり良くありません。
途中、花の里と書かれた案内板の近くにはヒカゲツツジが咲き始めていました。
坪山山頂の手前で小休止をしたのち、細くなった尾根道を登っていきます。西尾根コースを登ってきたパーティが山頂から下ってきます。息を切らせながら急な坂道を登ると小さな山頂にたどり着きました。
晴れ渡った青空の下、笹尾根の長く続く稜線の上には三頭山、振り返ると杉木立の先にかすんだ富士山がそびえていました。小さな山頂は食事をする場所を確保することもできません。山頂から少し下った道端に腰を下ろし食事にしました。
昼食ののち、西尾根コースを下ることにします。固定ロープが張られた急な坂道が続きます。木の根につかまりながら露岩の目立つ坂道を下っていくとヒカゲツツジの群生地です。ヒカゲツツジは淡い黄色の花をつけるツツジで、日当たりの良くない谷沿いに咲くことからその名が付いたと言います。
さらにしばらく下るとイワウチワの群生地がありました。登山道の脇に薄いピンクの花がたくさん咲いていました。表面が鏡のように光る葉はイワカガミの葉と良く似ているため、花が咲かなければなかなか見分けが難しそうです。この斜面にはイワカガミも咲いているといいますが時期が早いのか、咲いている花を見つけることはできませんでした。
急な坂道を下っていくと急坂は杉木立のなかに下って行きました。やがて小さな沢を渡ると朽ちかけた社の前にたどり着きます。目の前には急な斜面に張り付くように集落が広がっていました。
帰り道にはびりゅうかんに立ち寄ることにしました。びりゅうという変わった名前は鶴川の支流、美流沢にちなんで名付けられたと言います。山頂で出会ったパーティもここで休憩をしていました。館内には農産物を売っているコーナーのほか名物の手打ち蕎麦を食べさせてくれる食堂もあります。さっそく天ざる蕎麦を註文。一緒に注文した「たまじ」と言う小さな芋の煮物も美味でした。
坪山はヒカゲツツジとイワウチワの咲く山です。春の野山を彩るツツジにも色々な種類がありますが、淡い黄色の花をつけるヒカゲツツジはあまり目にすることがないツツジの一つです。岩山や沢などに咲くことが多いことも一般の登山道では見つけることが少ない理由の一つかもしれません。