唐松岳は白馬岳から続く稜線上の頂で、白馬八方のゴンドラを利用すると比較的簡単に山頂に立てることから多くのハイカーで賑わっているところです。夏山の花に恵まれた八方尾根は、水面に白馬岳を映す八方池とともにガイドブックにも紹介されているところです。
五竜岳は唐松岳から続く稜線上の頂で、日本百名山や信州百名山にも選ばれています。春先、東斜面に武田氏の家紋、武田菱の雪渓が現れることから御菱と呼ばれていたとも言われています。
10時過ぎ、新宿駅西口のバスターミナルは北アルプス方面に向かうたくさんのハイカーで賑わっていました。白馬岳へと向かう夜行バスのさわやか信州号は、大きなリュックサックを抱えたハイカーを乗せ中央道を西に向かい出発しました。
八方ゴンドラ駅=(ゴンドラ・リフト)=八方池山荘-0:40→第2ケルン-0:35→八方池-0:55→扇雪渓-0:30→丸山ケルン-0:35→2545m付近-0:15→唐松岳山荘-0:20→唐松岳山頂-0:15→唐松岳山荘(宿泊)、歩行時間 4:05
唐松岳山荘-1:25→大黒岳-0:35→ハイマツ帯-0:35→白岳下-0:30→五竜山荘-0:25→2,690m付近-0:45→五竜岳山頂-0:25→2690m-0:40→五竜山荘(宿泊)、歩行時間 5:50
五竜山荘-0:25→2640m付近-0:35→2230m付近-0:55→大遠見山-0:40→中遠見山-0:45→一ノ背髪-0:35→地蔵の頭-0:20→アルプス平駅=(ゴンドラ)=山麓駅、歩行時間 4:15
目を覚ますとバスは青木湖の近くを走っていました。しばらく一般道を走ったバスはまだ人気も少ない白馬八方のバスターミナルに到着。早朝にもかかわらずコーヒースタンドが店を開けていました。店員は中近東の人のようで日本語は少し不自由なようです。
白馬の町の中をしばらく歩くとゴンドラの山麓駅です。ここからはゴンドラとアルペン、グラードの2つのリフトを乗り継ぎ八方池山荘へと登って行きます。この斜面は長野オリンピックのアルペン競技が行われたところです。往時は高山植物の保護を優先するのか競技の難易度を確保するのかで、スタート地点の決定に論議が巻き起こった記憶が残っています。
八方池山荘からは石が敷き詰められた登山道を緩やかに登り始めます。左手を見ると明日登ろうとしている五竜岳、岩峰がそびえる山頂付近にはまだ小さな雪渓も残っています。それから続く稜線の上には鹿島槍の双耳峰がするどい三角形の頂を天に向かって突き上げていました。
たくさんの花たちをカメラのファインダーに収めながらたどり着いた広場には息ケルン(ヤスムケルン)の文字が刻まれた第2ケルンが建っていました。ここは八方池山荘から登ってくる急坂を合わせるところで、ハクサンシャジンのお花畑の先には白馬鑓ヶ岳から不帰嶮へと続く岩壁がそびえ立っています。
ケルンでひと息を入れたのち八方池に向かいます。稜線を緩やかに登って行くと大きな八方ケルンです。このケルンは人が笑っているように見え、心がなごむケルンです。
やがて第3ケルン、目の前には小さな八方池が青い水をたたえています。ここは天狗ノ頭の岩壁を水面に映すところで、観光ポスターなどでもお馴染みのところです。青空の下、白い岩壁と緑のハイマツ、午前中、好天など好条件が整っていましたが少し風が強いのか、さざ波が立つ水面は白馬岳の姿を映してはくれません。「八方池も曇っていればただの水溜り・・」という話を聞いたことがありますが、なかなか思ったような写真を撮ることは難しいものです。それでも水面に岩壁が映し出されるビューポイントには、たくさんのハイカーがカメラを抱えてシャッターチャンスを窺っていました。
稜線から振り返ると雲海の先に北信州の山々がそびえていました。ひときわ高いのが高妻山、その左手には妙高山や火打山、焼山などの頂を見付けることができす。ここから北信の山まではおよそ40km、思いのほか近いものです。昨年、火打山で朝日を浴びた白馬岳のPanoramaに感動した記憶がよみがえってくるようです。
ここからは本格的な山道が始まります。幾分、傾斜を増した登山道はダケカンバなどの樹林帯の中を登りながら高度を上げていきます。たどり着いたところは遅くまで雪渓の残るところのようで、大きな石がごろごろと積み重なっています。
雪渓でひと息を入れたのち、樹林帯の斜面を登って行きます。雪渓が残る斜面には猿の親子が遊んでいました。木の実など餌が豊富にあるのか、このような高いところにも猿の生息範囲が広がっているようです。
しばらく登った稜線の上には丸山ケルンがあります。広く開けた稜線の上からは目の前に天狗ノ頭から不帰嶮への岩峰、振り返ると北信州の山々、左手には五竜岳と鹿島槍の岩峰がそびえていました。
丸山ケルンからはなだらかな尾根道が続いています。左手が切れた桟道を越えると程なく唐松岳山荘にたどり着きました。さっそく宿泊の手続きをしたのち、山頂を往復することにします。週末の土曜日ということもあり、今夜この小屋に泊まる人もかなり多いようです。
山荘にリュックサックなどを置いたのち、唐松岳の山頂を往復することにします。岩まじりの斜面をひと登りすると唐松岳の山頂です。三角点の建つ狭い山頂からは360度の展望が広がっています。
目の前には雲を巻きあげる立山から剣岳の稜線。午後の日にシルエットとなった稜線にはまだ雪渓も残っています。それから続くなだらかな稜線は北薬師岳から薬師岳へと続く山々。来年の夏にはその頂にも足跡を残して見たいものです。
振り返ると白馬岳へと続く稜線が目の前に続いています。一度切れ落ちたところが不帰嶮と言われるキレットです。天狗沢に向かって切れ落ちた岩峰の縦走路は北アルプスの難所の一つです。目を凝らすと小さな点となって登ってくるハイカーの姿も見え隠れしていました。
今夜の夕食は6時過ぎ、かなり混雑した食堂で夕食です。燕岳や常念岳でもそうでしたが北アルプスの山小屋は何処も美味しい食事を食べさせてくれます。この山小屋もヘリコプターでの荷揚げを行っているようでしょうが、山の上で美味しい食事に出会えるのはありがたいものです。
朝起きると東の空には低い雲がたなびいています。山荘裏の小山の上に立つと、草津の山々の上の雲が茜色に染まっていますが期待していた日の出には出会えません。目の前には黒いシルエットとなってそびえる立山から剣岳の峰々。朝日が登り始めたのか一筋の日の光が山肌を貫くように伸びていました。
右手、八ヶ岳の肩に浮かぶのは富士山です。ここから富士山までは直線距離で170km。北アルプス周辺で富士山を遠望できるポイントとして白馬乗鞍岳が知られていますが富士山までは178km。唐松岳はかなり遠くから眺める富士山と言うことができます。
朝食ののち、五竜山荘へ向かう縦走路へ。小さな尾根をひと登りするとそこからは牛首と言われる岩稜となります。岩場を乗り越えると鎖場が張られた岩場を下って行くようになります。この岩場は落石も多いようでスリップ事故も発生していると言います。途中には右手が切れ落ちているところもありました。小さな岩場を登り返したピークが大黒岳頂上です。ここからはこれからたどって行く縦走路を一望することができます。
登山道は一度鞍部へと降りて行きます。付近はハイマツと高山植物に覆われたところで、振り返ると大きな大黒岳、その上に唐松岳がそびえていました。
ここからは白岳への登りが始まります。岩屑の登山道はハイマツ帯の中を緩やかに登って行きます。右手の斜面ではニホンザルの親子が遊んでいました。唐松尾根でも猿を見かけましたが、夏場はこのような高いところにも登ってくるようです。
遠見尾根との分岐を別けると 五竜山荘は目の前です。たどり着いた五竜山荘で宿泊の手続きを済ませたのち、ディザックに水などを詰め替え五竜岳の山頂を目指すことにしました。
五竜山荘からは岩屑の登山道が始まります。五竜山荘が小さくなるにつれ、これまでたどってきた縦走路が一望できます。意外に大きな大黒岳、その奥には三角形の唐松岳、白い岩肌を突き上げるのは白馬鑓ヶ岳でしょうか。
鎖を頼りに岩場を巻くようにして登ると山頂直下の岩場です。右手には大きな雪渓が融け残っています。細くなった岩尾根を登ると程なく五竜岳の山頂です。
広く開けた山頂からは360度の展望を楽しむことができます。正面には立山と剣岳、左手に目を移すと薬師岳のなだらかな稜線、鹿島槍の双耳峰の先には槍ヶ岳の三角形の頂を見付けることができました。山頂で展望を楽しんだのち五竜山荘へ戻ることにしました。
朝起きると目の前には雲海が広がっています。東の空は白み始めてきましたが御来光は見られそうにもありません。朝食ののち、遠見尾根を下り五竜テレキャビン駅へ向かうことにします。
山荘脇のコブを登ると遠見尾根の下りが始まります。巻き上がる雲の中から五竜岳が我々を見送ってくれています。明るい稜線をたどる登山道には小さなアップダウンを繰り返しながら遠見尾根を下って行きます。
西遠見山から下った鞍部には西遠見ノ池。五竜岳の岩峰を水面に映す小さな池は遠見尾根のビューポイントの一つです。さらにしばらく下ったところが大遠見山です。1/25000地形図には付近に三角点があるようです。付近を探してみましたが見つかりません。山頂の三角点は見付けやすいものが多いようですが、稜線の途中の三角点を見付けるのはなかなか難しいものです。
小さなピークをたどりながら下ったところは小遠見山。平日にもかかわらずかなりのハイカーが急坂を登ってきます。ロープウェイを利用して小遠見山付近まで散策に訪れるハイカーも多いようです。
案内板に従い小さく登り返したピークは地蔵ノ頭です。ガスに覆われ視界もきかない山頂には大きなケルンが建っています。テレキャビンの山頂駅はもう目の前、ここで最後の小休止を取ったのちアルプス平のテレキャビン駅に向かいました。
地蔵ノ頭を下ると広い木道が続いています。付近はお北アルプスに咲く花を紹介する花畑になっています。すでに夏山の花に時期は終わってしまっているものの、カライトソウ穂のような花を付けていました。伊吹山の特産種ヤマルリトラノオも紫色の花を付けていました。
八方尾根の稜線は艶やかさを競うように高山植物が咲き乱れているところです。この時期目立つ花はタムラソウやカライトソウ、マツムシソウや珍しいもハッポウタカネセンブリも見付けることができます。すでに山は夏から秋の花に主役を譲ろうとしているようです。
扇雪渓を越えるとチングルマなど砂礫地に咲く高山植物が多くなってきます。唐松岳のの稜線にはコマクサやトウヤクリンドウも咲いていました。
唐松岳から五竜岳へと続く縦走路にも高山植物が咲いています。五竜山荘の近くにはチシマギキョウやタカネバラを見付けることができます。
長く続く遠見尾根を下って行くと地蔵ノ頭です。明るく開けた頂はタムラソウやハクサンシャジンの咲くお花畑になっていました。アルプス平ら周辺は高山植物を集めた園地になっています。伊吹山の特産種と言うヤマルリトラノオも咲いていました。