乗鞍岳は剣ヶ峰を始めとして、大日岳、摩利支天岳など22の峰々の総称で、3,000メートルを超える峰々や火口湖が点在するコニーデ型の火山です。深田久弥氏の日本百名山にもその名を連ねる北アルプスの秀峰です。
北アルプスの山旅は山小屋に数泊するのが当然な山域です。その中にあって乗鞍岳は乗鞍スカイラインを利用すれば、日帰りでもその山頂に立つことができそうな山です。しかし高速道路を利用しても平湯峠まで300km。やはり北アルプスは遠い山域です。
上高地の玄関となっている沢渡りから安房峠を越え平湯温泉へ。ここから再びカーブの多い山道を登って行くと平湯峠です。道を左に折れると乗鞍スカイラインの料金所。明るい稜線の上の道を、カーブを描きながら登って行くと登山口である畳平の駐車場にたどり着きました。
鶴ヶ池脇の舗装道路が登山道。広い道をしばらく登るとコロナ観測所への道を右に分けます。ここからは未舗装の山道となりました。コロナ観測所を山頂に乗せた摩利支天岳を巻くようにして進むと肩の小屋。付近一帯は室堂ヶ原と言われるところです。
ここから道はザレた岩の間を登って行く登山道になります。左手の斜面は7月の末まで雪が残るという大雪渓。その下には乗鞍高原から登ってくる自動車道に延々と車の列が続いています。やがて登りが緩やかになってくると朝日岳と蚕玉岳の按部です。目指す剣ヶ峰の山頂は、ここから大きな岩の間をひと登りしたところにありました。
狭い山頂には乗鞍神社と本宮神社の奥社が建っていました。振り返るとコロナ観測所を頭に載せた摩利支天岳の向こうに、北アルプスの峰々が白い岩峰の稜線を空に向かって突き上げています。左から焼岳、穂高岳、ひときわ鋭い三角形の尖塔は槍ヶ岳。山頂は大きなカルデラの縁に立っているようで、目の前には火口湖の権現池が青く水をたたえています。これを大日岳、薬師岳、雪山岳、水分岳の峰々が取り巻き朝日岳へと続いていました。
山頂からは畳平へ戻ることにします。まだ山頂を目指し荒い息を弾ませながら登ってくる人が長い列を作っていました。摩利支天岳のすそを巻くと、目の前には不消ヶ池が青い水を湛えています。すでにこの付近は秋も本番。池のほとりにはナナカマドが真っ赤に紅葉していました。
ここからはお花畑の中をたどる遊歩道です。もうすでに夏山を彩る花の季節は終わっていますが、それでも遅れて咲く花が夏の名残を語り掛けています。たどり着いた畳平の駐車場で一休み。土産物屋をのぞいたりビジターセンターで乗鞍岳の案内を見たり。こうなると此所は3,000mを超える山の上なのか、何処かの観光地なのか、にわかには判らないものです。
時間はまだ2時。しかし、ここから自宅までは約300kmを超える距離があります。早々に自宅への道を急ぐことにしました。