北アルプスの秀峰、白馬岳と五竜岳の中間にある唐松岳は、単独での登山の対象よりも後立山連峰の縦走路上の頂として紹介されている山です。インターネットなどを見ると、花が美しい、簡単に登れる、北アルプスの入門コースなどのキーワードで紹介されている山です。
今日は木曾御岳に登ろうと思っていましたが、天気予報では「中央アルプス一帯の天気はあまり良くない。反対に北アルプスはまずまずの晴天」とか。ここは予定を変え、唐松岳を目指すことにしました。たどり着いた白馬は長野オリンピックのジャンプ競技や男女の滑降競技が行われた所です。この付近もオリンピックでずいぶん変わったようです。
八方尾根にはゴンドラで登って行くのが一般的ですが、八方尾根スキー場まで車道も続いているようです。白馬の温泉街で道を左に登って行くと、スキー場へと向かう道です。急なカーブを繰り返しながら高度を上げて行くと目指す八方尾根スキー場です。
八方尾根スキー場の大きな駐車場はすでにたくさんの車が溢れていました。スキー場の黒菱リフトは10分ほどで黒菱平に我々を運んでくれました。
ここは小さな池と湿原のある台地で、左手からは登ってくるロマンスリフトの観光客などでかなり混雑しています。この台地はオリンピック女子大回転のスタートハウスになったところです。記念に残されたスタートハウスからは、「ピッピッピー・・」とスタートを切る電子音が流れています。男子の大回転のスタート地点はこの上の斜面から行われたと言います。自然保護のためスタート地点を何処にするかで、新聞紙上を騒がせた記憶がよみがえってきます。
黒菱平からロマンスリフトで八方池山荘のある台地まで登ることとしますが、凡そ30分ほどの待ち時間。街の中や観光地なら仕方がないものの、山に来てまで待ち行列に並びたくはないものです。
たどり着いた八方池山荘からは、緩やかな登山道が尾根に向かって伸びています。岩の多い遊歩道と言った雰囲気の道を、家族連れや高齢者の一行が楽しそうに登っています。やがて小尾根の上にたどり着くと、コンクリートで作られた第2ケルンです。広く開けた稜線も湧き上がるガスに包まれ視界はまったく望めません。
さらに緩やかに尾根道を登って行くと木道が現れました。左手の小さな沢はだいぶ遅くまで雪が残っていたようです。さらにしばらく登ると第3ケルン。目の前には小さな八方池が水をたたえていました。この尾根に腰を下ろし小休止です。しばらくすると、湧き上がる雲の中から、白馬岳の山頂がその姿を現してくれました。観光ポスターなどで幾度か見たことのある八方池に影を映す白馬岳の姿は、実際に目の前にするとなかなか感動する眺めです。ふと目の前の斜面を見ると雷鳥がハイマツの中を歩いていました。
小休止の後、唐松岳の山頂へ道を急ぐこととします。しばらくすると登山道はダケカンバの林の中を登る道になります。先程までのハイカーの賑わいが嘘のような本格的な登山道です。急な登りにひと汗をかくと登山道は高山植物に覆われた斜面を登って行きます。今を盛りに咲く夏山の花はミヤマコウゾリナ、トリカブト、トラノオ、ウメバチソウ、シモツケ、ワレモッコウ、イワオトギリ、それに秋の花のマツムシソウなど。お花畑の斜面をしばらく登ったところが扇雪渓です。扇形の斜面に遅くまで雪渓が残る所で、小さくはなったもののまだ雪渓が残っていました。歩き始めたのが遅かったため、すでに時計は1時を指しています。今日はこの道端で昼食です。
昼食の後、ふたたび山頂を目指して急な登山道を登って行きます。道端の高山植物がチングルマやツガザクラなどに変わってくると、やがて道は左手が切れ落ちた岩場を通過します。幾度か岩場を過ぎると主稜線上の小さな頂である牛首岳。目の前には赤い屋根の唐松岳小屋が建っています。左手に向かう道は五竜岳。右手の尾根をたどると目指す唐松岳です。
右手が切れ落ちた稜線上の斜面に最後のひと汗を流すと、唐松岳の山頂です。広く開けた山頂からは、正面に黒い稜線を連ね立山と剣岳。さらにその左手には三角形の尖塔を天に突き上げる槍ヶ岳が霞んでいます。左手手前の大きな山は五竜岳。急な岩の斜面に登山道が続いています。右手の稜線をたどると道は、白馬鑓ヶ岳、杓子岳から白馬岳へと続く道。途中には急峻な不帰ノ嶮という難所もあると言います。
山頂で展望を楽しんだ後、登山口を目指し下って行くこととします。
八方池山荘にたどり着いた時は5時半。リフトはすでに運転を終わっていました。山頂から2時間でここまで下るのは結構きついものがあります。リフト脇のベンチに腰を下ろし小休止です。
目の前の八方池山荘には、かなりたくさんの宿泊客がいるようです。明日はここでご来光でも眺めるのでしょうか、小さな子供連れも数組泊まっているようです。しばらくするとあたりには夕闇が迫り始めてきました。山麓からは霧が上がり始めてきます。リフトの脇に続く山道をたどり、車を停めた黒菱平へと下ることとします。