山梨百名山の一つに高ドッキョウという変わった名前の山があります。高ドッキョウは高読教と呼ばれていたとも、峠がなまってドッキョウと言うようになった説などがあると言います。
奥多摩には芋ノ木ドッケ、三つドッケ、高ドッケなどドッケという山名が幾つかあります。ドッケとは鋭峰の呼称で古代朝鮮系の言葉とか。ドッキョウとドッケは関係があるのかも知れません。
登山口は興津川の支流、中河内川に沿った農道をしばらく登ったところにあります。お茶畑脇に数台の駐車スペースがあるのでここに車を停めました。地元ナンバーの車が1台道端に停まっていました。この車も山頂を目指しているようです。
登山口からは暗い杉林の中を樽峠に向かって登っていきます。沢沿いの道はあまり人が入っていないようで腐りかけた桟道などがあるものの少し荒れ気味です。石ころの多い山道をしばらく登ると樽ヒュッテへの分岐です。左手の階段を上ると無人の樽ヒュッテがあるようですが、ここに泊まる人はあまりいないようです。
小さく沢に下ったところには勢いよく水が流れる水場があります。ここからは樽峠に向かい杉林の中をジグザグに登って行きます。やがて目の前が開けると2体の石仏が迎えてくれる樽峠にたどり着きました。右手の道は平治ノ段を経て貫ヶ岳へと向かう道、正面には石合からの林道が峠の下まで登ってきているようです。
道端で昼食を済ませたのち、高ドッキョの山頂を目指すことにします。真新しい導標には山頂まで2時間30分とか。地図ではそれほどの距離でないようですが帰りの時間が気になるところです。
登山道は防火帯のような広い道を緩やかに登って行きます。スミレの花が目立つ登山道は小さなピークを拾いながら高度を上げていきます。
やがて登山道は細い稜線を歩くようになります。まだ芽ぶきも始まっていないものの、木が伸びすぎているためか稜線からの視界はあまり良くありません。目の前に見えるはずの篠井山や十枚山もわずかに梢の先にその姿を見せてくれるだけです。
小さな鞍部の先に展望台の標識がありました。左手に静岡方面が開けた展望台があります。しかしかすんだ空の下では頂の名前を見つけるのも難しいものがあります。
展望台から小さなピークを越えると高ドッキョウへの急な登りになります。木の根につかまりながら登りつめた山頂は東西に長い頂で、串団子のような標柱の立つ山頂は頂の奥にありました。残念ながら付近の木々が伸びすぎているようで、わずかに梢の先に富士山が見えるだけです。
山頂から山梨県側に作業道のような道が開けていたので少し降りてみましたが、富士山の頂は雲に覆われよく見えませんでした。
山頂で一休みしたのち、往路をたどり登山口に戻ることにします。樽峠で一休みしたのち暗い杉林の中を下っていくと車を停めた農道の終点にたどり着きました。
細くなった稜線には白いヤマイワカガミが咲いていました。ヤマイワカガミは太平洋側に多いヒメイワカガミの仲間で、葉の側脈が直線的で基部に集まることがないのが特徴のひとつとか。鳴神山の山頂で小さな群生に出会ったことがありますが、これほどたくさんのヤマイワカガミが咲いているのも珍しいものです。