昔は遥山と呼ばれていた春香山は、札幌近郊の山スキーの山として親しまれたところです。山頂直下に銀嶺荘という古い山小屋もあります。
登山口からは銭函川に沿って続く林道を緩やかに登って行きます。折からの好天で気温もかなり高くなっているようで、すぐに汗が噴出してきました。エゾハルゼミでしょうか、ミーミーとあたりに響く声が初夏の訪れを感じさせてくれます。そろそろ低い山へのアプローチは暑さに悩まされる時期がやってきたようです。登山道は林道を離れ、落葉樹の林の中を緩やかに登って行きます。やがて林が開けると登山道は明るい雑木林の稜線をたどるようになります。
たどり着いた広く開けた広場は土場。ここからは大きくカーブを描く石狩湾を一望することができます。目の前には石狩の港。遠く霞むのはピンネシリや神威尻山などの山々です。
土場から急な坂道をひと登りすると、登山道は明るいダケカンバの林の中をたどる尾根道になります。展望はまったく利かないものの、明るい若葉の中を登る尾根道はなかなか心地のよいものです。やがて道が緩やかになると銭函峠です。左手の藪の中に続く道は小樽内川を下りヘルベチアヒュッテに下って行く道と言います。明るい尾根道は秋にはナナカマドの紅葉で彩られる道です。
しばらく緩やかな尾根道をたどると銀嶺荘にたどり着きました。付近には小川が流れ、水溜りには大きなカエルの卵。細長い塊はエゾサンショウウオの卵でしょうか。
ここからは正面にそびえる山頂に向かい急な登りが始まります。道端のサンカヨウやシラネアオイの花に励まされながらジグザグに高度を上げて行くと、ほどなく笹に覆われた山頂にたどり着きました。春霞みに幾分霞んでいるものの、目の前にはたくさんのアンテナを頭に載せた手稲山。広く広がる札幌の町の向こうにはピンネシリや神威尻山など樺戸の山々。その奥に霞むのは暑寒別の稜線です。
山頂で昼食の後、往路をたどり登山口まで戻ることとします。この山は今が山菜刈りの真っ最中。途中で出会った人たちも、大きなビニール袋にフキやササノコ、ウドなどを詰め込んでいました。
土場に向かって登って行く暗い林の中も今は花の季節。白いマイヅルソウやチゴユリなどに混じり、珍しいサイハイランやレイジンソウを見付けることが出来ます。
土場の近くに咲くというカタクリはすでに青い実の時期を迎えていました。山頂直下にはシラネアオイやサンカヨウが短い北国の陽光を浴びながら大きな花を付けていました。