明治末期にはすでに登山道ができていたと言う手稲山は北海道の登山の原点と言える山です。札幌市内から見上げると山頂にテレビアンテナを載せた姿が、何時も我々を見下ろしています。登山道は手稲オリンピアから登って行くコースと、北尾根を登っていくコース、それと発寒川の平和ノ滝から登っていくコースが開かれています。中でも人気なのは平和ノ滝コース。途中には伏流水や岩に覆われたガレ場があり、家族連れなどで何時も賑わっているハイキングコースです。
登山口は平和ノ滝の傍らにある大平和寺から。落葉松やイタヤカエデが紅葉している林道を発寒川に沿って歩き始めます。紅葉を愛でながらの林道歩きに飽きはじめる頃、道は右手の沢を登り始めます。小さな沢を渡り右岸の道を登り始めると布敷ノ滝。滑滝ですがなかなかの迫力のある滝です。やがて登山道は沢筋から離れゴツゴツした岩の道を登るようになります。水の多い時は涼しげな伏流水の流れる音もするようですが、今がただ歩きにくいだけです。やがて急な登りも一息すると目の前が明るく開けたガレ場にたどり着きました。紅葉の最中はナナカマドの紅葉が綺麗な所ですが、今は晩秋の寂しさだけが残っています。
溶岩が押し出された地形なのでしょうか。このガレ場がこのコースを面白くさせているのは間違いありません。やがて登山道はチシマザサの台地にたどり着きます。最後の小尾根をひと登りするとケルンの建つ山頂の肩。目の前にはテレビアンテナや放送局の施設が建っています。都市近郊の山の宿命でしょうが、山頂にはスキーリフトや工事用の自動車道路が通じています。観光客に開放されていないのがせめてもの救いですが、折角の山もやはり味気なくなるのは致し方ないものです。
山頂からの眺めはなかなかのものです。正面が石狩湾に面しているため山としての展望は少ないものの、目の前に広がる手稲や石狩の町。左手には春香の山や奥手稲の山などが連なっています。山頂の木々はすでに錦の衣を脱ぎ捨て、あたりはすでに晩秋を迎えているようです。