定山渓温泉の北西、小樽内川と白井川に挟まれた山中に、急峻な岩峰をひときわ高く天に突上げている山が定山渓天狗。札幌の近郊にありながら、ロッククライミングの山を連想させる岩峰のためか、今まで足を向けなかった山です。
走り慣れた国道230号線をたどり定山渓へ。ここから道を右に折れ、豊羽鉱山を目指して白井川に沿いの道を登って行くと、鋭い岩峰を天に突き上げる定山渓天狗が見えてきます。白井川の左岸にある登山口には、吊り橋で渡れたこともあったようですが、台風で流出してからは下流の神居橋か、上流の白井二股の何れかから歩くことになります。ひとまず白井二股に向かってみると「林道は荒れているため、定山渓天狗へは神居橋から向かったほうが良い・・」とか。今日は神居橋から山頂を目指すことにします。
豊羽鉱山が管理している林道は、一般車両の通行を禁止しています。途中までは造林の車両などが出入りしているようですが、あまり車の入っていない荒れた道です。
林道歩きに飽きはじめるころ、熊ノ沢コースの登山口にたどり着きました。登山道はトド松林の中を緩やかに登り始めます。熊ノ沢の清流に沿って登る登山道は、幾度か渡渉を繰り返しながら高度を上げて行きます。道端にはサイハイラン、ギンラン、ユキザサやトリカブトなどの花が咲いています。サイハイランはあまり目にする機会が無かった花です。やがて南尾根の岩壁が目の前にそびえるようになると、沢は次第にその傾斜を増してきます。幾つかの滝が現れ、高巻きを繰り返しながら沢を詰めて行きます。そろそろむし暑さが体に応える時期。とりあえず道端に腰を下ろし小休止としました。
小休止の後、ますます傾斜をきつくする熊ノ沢に息を弾ませながら、大きな岩の間を登って行きます。枯れた沢を登りつめると正面に岩壁が見えてきます。付近一帯は定山渓天狗のお花畑。エゾグンナイフウロウやミヤマオダマキが群生しています。登山道は目の前にそびえる岩壁を回り込むように、ジグザグを繰り返しながら高度を上げて行きます。滑りやすい斜面には、まだシラネアオイが咲き残っていました。
やがて登山道はウエストコルと呼ばれる岩壁の鞍部に向かい、20メートルほどのルンゼを登って行きます。ロープが固定されていますが、急な岩壁のうえ、滑りやすいので緊張させられる所です。稜線上にたどり着くと山頂は目の前です。
たどり着いた狭い山頂はさっぽろ湖方面の視界が大きく開けています。曇り空の下、あまりスッキリとした展望は期待できませんが、それでも青く水を湛えるさっぽろ湖、その向こうには雲をいただく余市岳。雲に溶け込むように後志羊蹄山もその姿を見せています。山頂を少し下った草原に腰を下ろして昼食とします。
昼食の後、往路をたどり登山口へ。ロープが固定されているルンゼは滑りやすく、なかなかキツイ下りです。腕力が落ちているのか、途中で腕がだるくなってしまいました。
定山渓天狗は花の山としても有名なところです。小さいながらも山頂直下には高茎草原が広がっています。その代表がエゾグンナイフウロとミヤマオダマキ。エゾグンナイフウロはチシマフウロと良く似た青紫の花をつけるフウロですが、その違いを見分けるのは難しそうです。ルンゼの近くに咲くサクラソウモドキは珍しい花。礼文島、利尻島、崕山などとこの山にのみ自生している花と言います。
沢沿いにはユキザサやギンランなどに混じりサイハイランが花を付けていました。淡茶色の花はあまり綺麗ではありませんが、戦国時代の武将の持つ采配に似ていることからこの名が付いたと言います。