札幌市内の南西に連なる山並みの中で、藻岩山の奥に小さな頭を持ち上げる頂が砥石山です。札幌市内から近いこともあり、登山コースは福井堰堤からの砥石沢コース、小林峠からの小林峠コース、それと八垂別ノ滝から登る中ノ沢コースが開かれています。藻岩山には及ばないものの、春先や秋口にはたくさんのハイカーが訪れる山です。
平地では雪が解けてすでに1ヶ月がたち、桜の花も先週で終わってしまいました。しかし山はまだ雪解け直後の、明るい若葉に包まれた季節です。
登山口である八垂別ノ滝は小さな沢にかかった滑滝です。案内板で紹介されなければ通り過ぎてしまいそうな小さな滝が水音を立てていました。春の花に彩られた沢に沿って続く道をしばらく進むと、道は右手の尾根に向かい緩やかに登って行きます。まだ芽吹きも始まっていない明るい雑木林の中をジグザグに高度を上げて行くと、ほどなくT4分岐といわれる尾根上の一角にたどり着きます。
T4分岐からは、ミズナラなどの明るい尾根道を、山頂の手前にそびえる三角山を目指して登って行きます。左手の斜面にはまだ残雪が残っていました。三角山の山頂を巻くようにして登山道を進むと小さな鞍部にたどり着きます。目の前は視界が開け、明るい青空の下に札幌の町並みが広がっています。ここからは正面の小高いピークに向かい急な坂道を登って行きます。斜面の一部は残雪に覆われ、この付近は春の目覚めを迎えたばかりです。登り詰めた頂は稜線上の一角、山頂は小さなコブを2つ超えたところです。
潅木に覆われた山頂からは、正面に広がる札幌の町。右手には空沼岳の稜線が白い雪を被っています。振り返るとアンテナを頭に載せた手稲の山頂。低山とは言いながらなかなか見事な展望です。
砥石山の山頂で昼食の後、往路をたどり登山口に戻ることにしました。明るい雑木林の中、春の花をデジカメのファインダーに収めながら道を下って行くと、車を停めた駐車場です。
中ノ沢に沿って続く林道は春の野山を彩る花々が咲き乱れ、今がまさに春本番です。白いニリンソウや淡い水色の花を付けたエゾエンゴサクがあたり一面を春の色に染めています。茶色の花を付けたエンレイソウ、白い穂のような花をつけたヒトリシズカもあちこちに小さな群落を作っています。沢沿いの斜面にはシラネアオイがピンク色の花をほころばせていました。