尾瀬の笠ヶ岳は関東百名山に選ばれた山です。至仏山や燧ヶ岳と異なり多くのハイカーが訪れる尾瀬ヶ原から遠く離れていることもあり、訪れる人も少ない静かな山行が期待できる山です。またこの山は至仏山と同じ蛇紋岩の山という地質上の特徴を持っています。このことからホソバヒナウスユキソウやタカネシオガマなど珍しい花の咲く山として知られています。
尾瀬第一駐車場=(乗合バス)=鳩待峠-(1h35m)-オヤマ田代分岐-(2h35m)-笠ヶ岳-(0h15m)-片藤沼分岐-(2h15m)-オヤマ沢田代展望台-(1h20m)-鳩待峠-(0h50m)-山ノ鼻キャンプ場(テン泊)
歩行時間 8:50
歩行時間 8:50
山ノ鼻キャンプ場-(1h35m)-東電小屋-(0h45m)-見晴十字路-(1h15m)-牛首分岐-(0h50m)-山ノ鼻見本園-(1h15m)-鳩待峠=(乗合タクシー)=尾瀬座第一駐車場
歩行時間 5:40
歩行時間 5:40
始発の乗り合いバスで鳩待峠に向かいます。かなりたくさんのハイカーでバスは満員です。観光バスやタクシーで鳩待峠まで登ってくる人も結構いました。
鳩待峠からは至仏山への登山道を登り始めます。ダケカンバなどの明るい雑木林の稜線は雨に濡れているものの思いのほか勾配も緩やかな歩きやすい道です。
途中、木立の先から尾瀬ヶ原が霞んで見えていましたが単調な登りが続いています。雑木林の中をたどる登りということもあり、登山道にはマイズルソウ、ゴゼンタチバナやミツバオウレンなどは咲いているものの目立った花は目にすることはできません。木の階段などの登りを繰り返しながら道を登って行くとオヤマ沢です。ここからひと登りすると木道が敷かれたオヤマ沢田代にたどり着きました。笠ヶ岳への分岐は木道の脇にありました。
木道の脇でお握りの朝食をとった後、笠ヶ岳に向かうことにします。登山者の数も少なくなり今までの整備された道と違い、泥濘に覆われた登山道が続いています。晴れていれば視界が広がる稜線上の道も白いガスに覆われ、目の前にそびえているはずの笠ヶ岳もその姿を見せてくれません。
道標が建っているだけの悪沢岳を越えると、登山道は小笠に向かって小さく下って行くようになります。草原状のお花畑にはイワイチョウが彼方此方に、登山道に目を落とすとハクサンコザクラのピンクの花も見付けることができました。
緩やかな登山道は泥濘の中を下って行くようになります。木道も整備されていない登山道は、彼方此方に大きな水たまりができ登山靴は泥だらけです。
小笠の山頂を巻く草原状のお花畑もたくさんの花が咲き乱れているところです。コイワカガミが思いのほかたくさん咲いています。草原の中にはヒメシャクナゲもピンクの花を付けていました。
一度小さく下った登山道は笠ヶ岳の斜面を登り始めます。ここも花の多い草原状のお花畑です。ヨツバシオガマやハクサンイチゲなどなど。細めのアズマギクはジョウシュウアズマギクとか。
斜面を巻くように進む登山道はたくさんの花が咲くお花畑の中を温泉小屋への分岐へと向かっていきます。このお花畑にはタカネマシオガマの花が咲いていました。上から見ると車輪のように見えるピンクに花は北海道の平山で見たことのある花です。ムラサキタカネアオヤギソウも始めて目にする珍しい花です。
温泉小屋へ向かう道を左に分けると山頂への岩まじりの急坂です。蛇紋岩が露出した急な登りは滑りやすく大きなリュックザックにはなかなか辛い登りです。この斜面も蛇紋岩帯に咲く花のお花畑になっています。岩の間に目立つのはホソバヒナウスユキソウ、ミヤマムラサキも小さな花を付けていました。
たどり着いた山頂は雲に覆われ視界は期待できません。それでも雲の間から奥利根の奈良俣湖、片藤沼の先に横たわる大きな稜線は上州武尊の峰々のようです。山頂には三角点がある予定でしたが山頂標柱以外はありません。山頂に建っている標柱は頭の丸い主三角点のようでした。
帰りは往路をたどり鳩待峠に向かいます。我々は始発のバスで笠ヶ岳を目指しましたが、6時半などそれ以降のバスで鳩待峠に付いたのち笠ヶ岳を目指した人も多いようです。我々が下り始めてからもかなり多くの人が山頂を目指していました。
途中、小至仏山への登山道を少し登ったところにある展望台で昼食にしました。目の前には尾瀬原が広がり晴れ渡った夏空の下に燧ヶ岳が広い稜線を広げていました。
鳩待峠に戻って携帯電話で尾瀬の天気を確認すると今夜は晴れ。明日は雲のち雨と言います。夜は雨も降らないようなので山ノ鼻へと下りテントを張ることにしました。鳩待峠から木道を下り始めたのが3時を過ぎ。これから尾瀬ヶ原に下る人はいません。息を切らせながら鳩待峠を目指す軽装の家族ずれが、途切れることもなく続いていました。
山ノ鼻の至仏山荘でテントの受付を済ませた後、テン場の空きスペースにテントを設営。今日このテン場で一夜を過ごす人は20組くらいになるようです。
夜はビジターセンターで尾瀬の自然をテーマにしたスライドショーを見て来ました。ガイド役の女性は花に詳しいようで面白おかしく尾瀬の説明をしていました。
朝食はパンとスープ。近くに炊事場もあるので普通のキャンプ場と変わりは無いようです。100円チップですがトイレも水洗で町の中のトイレと変わりありません。
アウトドアにたくさんの人がやって来る以上、トイレやゴミの問題は避けて通れないのでしょうが、都会と自然の中の垣根が低くなりすぎるのは少し気になるところです。
せっかく尾瀬にきたのだから・・ということで尾瀬ヶ原を散策してから戻ることにします。曇り空ですがニッコウキスゲも咲き始め道端に目を落としとトキソウやサワラン、オゼヌマダイゲキ、ヒメシャクナゲやマイザギソウなども咲いていました。
途中で道を左に折れ東電小屋へ。小屋が近づくころからポトポツと雨が降り始めて来ます。小屋の前の水溜りにはイワツバメが泥を集めていました。岩の少ない尾瀬では小屋の軒先などに巣を作っているようで、目の前の泥はその材料となっているようです。
東電小屋からシトシトと降り着くく雨の中を見晴十字路へ向かいます。途中、木道の上で見つけた大きなナメクジはダイセンヤマナメクジとか。まさに伝説のツチノコのような姿でした。
見晴し十字路からは行き交う人も多い木道の道をたどり山ノ鼻へ。雨は降り続いているものの至仏山も燧岳もその姿を見せてくれました。
山ノ鼻にたどり着いたの1時過ぎ、まだ時間は少し早いようですので山ノ鼻見本園を一周してから鳩待峠に戻りました。
たどり着いた鳩待峠にはかなりたくさんの人で混雑しています。乗り合いバスのほかに乗り合いタクシーが順次戸倉まで戻っているようです。我々もタクシーに相乗りして戸倉に戻りました。
この時期の笠ヶ岳はたくさんの花に出会える山です。至仏山や早池峰山と同じ蛇紋岩の地質は、普通の山には咲かない花たちの咲く山として我々を魅了しています。ホソバヒナウスユキソウはエーデルワイスに近いウスユキソウで、笠ヶ岳へと登る岩場に咲いていました。
またタカネシオガマもあまり見ることのない美しいシオガマです。最初に見たのは八ヶ岳、北海道の平山ではハイマツの稜線を覆うようにタカネシオガマとコマクサが咲いていました。しかし車輪のような姿をカメラに収めたのは今回が最初、なかなか面白い恰好に移るものです。
岩場に細い針のような葉を付けたのは白い花が咲いていないようですがミヤマウイキョウ。これも谷川岳や至仏山の岩場に咲くと言います。唐松岳へと登って行く八方池の近くにも咲いていたようです。
夏の尾瀬はニッコウキスゲの季節。木道沿いにはニッコウキズゲの黄色い群落が広がり始めていました。木道の脇に目を落とすとサワランやトキソウがピンクの花を付けています。2年ほど前に尾瀬沼を散策した時はサワランのみしか見付けられなったでしたが、ここ尾瀬ヶ原ではトキソウの方が多いようです。
また湿原にはトンボソウに仲間が目立たない花を付けています。尾瀬に咲くのは尾の部分が真っすぐに伸びたホソバノキソチドリ、尾の部分が髭のように曲がったマイサギソウも咲いているようです。