先週のNHKニュースの中で尾瀬の紅葉を紹介していました。何度か訪れた尾瀬の中で、まだ足を踏み入れていないコースが今回訪ねるアヤメ平です。
登山の人気の高まりとともに尾瀬が全国的に有名になり始めたころ、たくさんのハイカーにより踏み荒らされ裸地化してしまったと言うアヤメ平も、長い年月をかけた植栽などの努力により花に彩られた湿原が蘇ってきたと言います。また近くの富士見峠からは富士山も遠望できると言います。今回は鳩待峠からアヤメ平を訪ね、尾瀬ヶ原の草紅葉を楽しみながら鳩待峠へ戻ることにします。
鳩待峠へと向かう県道はマイカー規制となっていましたが、紅葉の最盛期も終わった先週から規制が解除され、鳩待峠まで車で登って行くことができるようです。規制区間となっていた県道260号線は今が紅葉の真っ最中で、赤や黄色に色付いた山肌が朝日を浴びています。外気温はマイナス3度、路面には薄く氷も張っています。鳩待峠の冬はもう目の前に迫っているようです。
アヤメ平への登山口は鳩待峠休憩所の裏手から始まります。コメツガやヒノキと広葉樹の明るい林の中を緩やかに登って行きます。登山道には木道が敷かれています。かなり冷えているようで木道には白く霜が降りています。
なだらかな登りに汗もかき始めるころ、広く開けた横田代にたどり着きました。茶色になり始めた草紅葉の斜面には池塘も点在しています。今朝の冷え込みで水面には薄く氷も張っていました。振り返るとコメツガの梢の先に至仏山が朝日を浴びていました。右手に目を映すと景鶴山の奥、遠く雲海に浮かぶ山は新潟の阿賀野川周辺の山々です。
道端のベンチで朝食ののち、ふたたび木道を登って行きます。しばらく登るとコメツガの丸い丘のような中原山です。稜線の先には燧ヶ岳の双耳峰が頭を出しています。その左手遠くには白い雪を被った飯豊連峰、景鶴山の奥にはなだらかな平ヶ岳の稜線も広がっていました。
中原山からさらに緩やかに木道を登って行くと広く開けたアヤメ平にたどり着きました。草紅葉の湿原には幾つかの池塘が点在し、まさに天上の楽園と言ったところです。
正面には大きな燧ヶ岳、振り返ると朝日を浴びた至仏山、さらにその左手には昨日登れなかった武尊山と雲海の上に浮かぶ赤城山。シルエットになってそびえる日光白根山です。2,500mを超えるその山肌はすでに雪が張り付いているようです。まさにこの湿原は360度の展望が楽しめるところです。
アヤメ平から緩やかに尾根道を下って行きます。目の前に青い富士見小屋の屋根が見えてくると富士見田代です。ここは大きな池塘に影を映す燧ヶ岳のビューポイント。まさに絵になりそうな景色です。
富士見田代からは尾瀬ヶ原へと下っていくことにします。道は解け始めた霜でかなりのツルツル状態です。緩やかに下って行く登山道は長沢に向かって下って行きます。階段や木の梯子なども整備された登山道ですがかなり滑ります。
やがて沢音が近づくと傾斜も緩くなります。カサカサと落ち葉が風に揺れる雑木林を抜けると尾瀬ヶ原にたどり着きました。さらに冬枯れの湿原をしばらく進むと龍宮分岐です。
ここは尾瀬ヶ原のメインストリートで、左に行くと山ノ鼻、右に進むと見晴らし十字路、真っ直ぐ進むと東電小屋に向かうことができます。たくさんのハイカーでにぎわう道端のベンチに腰を下ろしお握りのお昼ご飯です。
赤城山の右手には富士山が雲海の中からわずかにその山頂を出していました。アヤメ平から富士山までは直線距離で176km。一昨年登った北信五山の一つ飯綱山の山頂から見た富士山より15kmほど遠くから眺める富士山です。
群馬県は関東平野は挟んで富士山と対峙することから、富士山の遠望が期待できる山域です。ここ尾瀬周辺ではアヤメ平や富士見峠のほかにも、至仏山や燧ヶ岳の山頂からも富士山を遠望することができると言います。至仏山は富士山から175km、燧ヶ岳は富士山から183km離れた頂です。しかしこれらの山頂からはまだ富士山を遠望する機会には恵まれていません。