ニセイカウシュッペはアイヌ語で「絶壁の上にある山」を意味するとか。黒岳ロープウェイから眺めると、層雲峡の柱状節理の上に荒々しい大槍、小槍の岩峰。その上に広がる長い稜線の頂がニセイカウシュッペです。
清川から長い林道をたどる健脚向きのコースも、数年前、古川林道が一般に開放されてからは、比較的簡単に山頂を踏める山の一つになったと言います。しかし、黒岳や旭岳など表大雪の山々の賑わいを他所に、訪れる人も少ない静かな山歩きが楽しめるコースです。
長い古川林道の終点には大きな駐車場。ここからはダケカンバの稜線を緩やかに登っていく登山道が始まります。今朝からの雨を含みぬかるんでいる所もありますが、比較的歩き易い道です。単調な登山道を緩やかに登っていくと、道端にツバメオモトやショウジョウバカマなど、雪解け直後の山を彩る花が目を楽しませてくれます。さすが山が高いのか、7月になったにもかかわらず左手の沢沿いには残雪が残っています。
しばらく尾根道を登って行くと展望台です。層雲峡の柱状節理の岩壁を足下にして、黒岳や愛別岳など表大雪の山々が雲の間からその姿を見せてくれます。目の前には大槍、小槍の迫力ある穂先と、対照的なニセイカウシュッペの丸い山頂を一望することが出来ます。
やがて登山道は1,742メートルのコブの左肩を巻くようにして高度を上げて行きます。左手が沢に向かって切れ落ちている雪渓など、多少緊張するところもありますが、比較的なだらかな登りが続いています。登り詰めた稜線からはハイマツに覆われた道が山頂に向かって続いています。高度はすでに1,800メートルを越えたようで、ガスを含んで吹き付ける風はかなりの冷たさを感じました。
本峰手前の小尾根を巻くと小さな湿原があります。道端の目立たない草はタカネイという珍しいものとか。気が付かなければ雑草と見間違えそうな草です。
ここからハイマツの斜面を緩やかに登ると広く開けたニセイカウシュッペ山の山頂です。あいにく吹き付けるガスに覆われ、山頂からの展望は期待することが出来ません。山頂の一角で遅い昼食としました。吹き付けるガスを含んだ風は一向に収まる様子も無いようです。ウィンドブレーカーを着込んで展望の回復を待ってみましたが、あまり期待できそうも無い雲行きです。時計はすでに2時半。今日はおとなしく、登山口に向かって下ることとします。
明るい稜線をたどる登山道の両脇には、春先の山を彩る高山植物と、夏山を彩る高山植物が同居しています。白いハクサンイチゲの群生の隣にはチングルマの白い花や雪解け直後に花を付けるエゾノツガザクラが咲いていました。
この稜線に咲くフウロウはトカチフウロウ。チシマフウロウの一品種で花の色は淡青白色ということですが、変種は色々あるようです。また北海道に咲くハクサンイチゲのなかで特に花柄の短いものをエゾノハクサンイチゲと言うとか。しかし本州に咲くハクサンイチゲとの違いはあまり明確でないようです。