北海道の中央部、石狩川に沿って層雲峡へと登って行く国道39号線。この北側に位置する山域を北大雪と言います。標高は1,800メートルと表大雪に比べ幾分低いものの、表大雪の好展望台として隠れた人気の山々です。その最高峰はニセイカウシュッペ山、その稜線に続く小さな頂が平山です。どこが山頂かわからない山容そのものは魅力的といえませんが、表大雪の好展望台として、またコマクサやタカネシオガマが咲く花の山として有名です。
登山口は北見峠からしばらく下った奥白滝で道を右に折れ、上支湧別の集落から林道をしばらく登ったところにあります。
登山道は駐車場の脇から支湧別川に沿って緩やかに登り始めます。道端には白滝村が整備した登山道に咲く花々を説明した案内板が立っています。
緩やかに登山道を登って行くと支沢に懸かる夫婦ノ滝。さらにしばらく登ると、右手の沢に高さ10メートルほどの行雲ノ滝が懸かっています。水量も多く垂直に落下する様はなかなか涼しげなものです。
徐々に急になってくる登山道にあえぎながら高度を上げてゆくと、左手に冷涼ノ滝が大きな水音を上げています。さらに高度を上げてゆくと、ダケカンバの樹林帯が開け正面に第一雪渓が見えてきました。付近一帯は高茎草原になっているようで、たくさんの花が今を盛りに咲き乱れていました。雪渓を渡る涼風を楽しみながら今日最初の小休止です。目の前は広く開けていますが、ガスが低く谷筋に立ち込め、視界はほとんどききません。振り返ると見えるはずの武利岳など北大雪の山々も深いガスの中です。
小休止の後、明るく開けた稜線を緩やかに登って行きます。しばらく登ると雪田状の第二雪渓です。道端にはエゾコザクラが可憐なピンクの花を付けていました。やがて露岩帯に差し掛かると、1,737メートルの稜線は目の前です。 ケルンから道を左に折れ、なだらかな稜線をひとまず平山の山頂へと向かうことにします。
たどり着いた平山の山頂は平坦なハイマツの中の小さな頂で、山頂を示す標識と小さな社が建っているだけです。山頂一帯は深いガスに覆われ、期待した表大雪の展望は望むべくもありません。一瞬、小槍がその先鋒をガスの中に見せてくれましたが、すぐに深いガスの中にその姿を隠してしまいました。
山頂で視界が回復するのを待ってみましたがガスは晴れそうにもありません。仕方なく稜線上の最高点である比麻奈山へと向かうこととしました。
稜線をしばらく歩くと俄かに大粒の雨が降り始めてきました。強い風も吹き付けまるで嵐の中のようです。しばらく稜線を歩いてみましたが、雨はますます激しくなるようです。ここはあきらめて登山口に戻ることにしました。
この山は花に満ち溢れた山です。登りはじめてすぐの登山道沿いには、ハクサンナズナ、ミヤマキンポウゲ、エゾノレイジンソウ、もちろんマイズルソウやエンレイソウなどお決まりの花も多く咲いています。
冷涼ノ滝からしばらく登った第一雪渓にはチシマフウロウやウサギギク、雪渓の傍にはエゾノリュウキンカが黄色い群落を作っていました。さらにしばらく登ると雪田状の第二雪渓、雪渓の傍らにはピンクのエゾコザクラが咲いていました。
砂礫帯をたどる稜線上には、コマクサに混じりタカネシオガマがピンクの群落を作っています。タカネシオガマの群生はこの山の魅力の一つ。この群生を見るためにこの山に登る人も多いようです。