北海道の旅の途中、大雪の山を訪ねて見ることにしました。大雪山は旭岳を始めとして北海岳、間宮岳、北鎮岳、白雲岳などの山々からなる広大な山域の総称です。主峰である旭岳や黒岳はロープウェイが運行しているため、比較的簡単にその山頂が踏める山ですが、それ以外の山々はアプローチにも時間がかかる奥深い山です。今回は層雲峡からロープウェイを利用し、黒岳の山頂を往復することにしました。
林立する岩壁に眼を奪われながら、大きなホテルが建ち並ぶ層雲峡の温泉街を登って行くとロープウェイの層雲峡駅です。大きな駐車場はすでにたくさんの車で溢れています。登山靴、リュックサックなどに身を固めた後、ロープウェイを利用して五合目の黒岳駅へ。五合目からはリフトを乗り継ぎ七合目へと登っていきます。
ここからはダケカンバの林の中をジグザグに登って行く本格的な登山道が始まります。八合目を越えると森林限界となり、短い北海道の夏山を彩る高山植物が咲き乱れるお花畑が広がっています。登山道にはエゾリスが可愛い顔を覗かせてくれました。久しぶりの山行に体調は今ひとつ。あえぎなら一歩々高度を上げていくと、標高1,984メートルの黒岳山頂にたどり着きました。
山頂からは晴れ渡った北国の青空の下、360度の展望を楽しむことができます。正面右手にはゴツゴツとした桂月岳の岩峰。爆烈火口の跡というお鉢平をめぐるように、北鎮岳、中岳、間宮岳、北海岳などの2,000メートル峰を間近に眺めることができます。その間に頭を覗かせているのは大雪の主峰旭岳です。さすが北国の山だけあって、8月というのに白い雪渓が山肌に残っています。北鎮岳の山肌には白鳥千鳥の雪渓を見付けることも出来ます。ふり返ると遥か遠く棚引く雲の上に雄阿寒岳、雌阿寒岳、摩周岳が頭を出していました。
山頂での展望を楽しんだ後、往路をたどり五合目のロープウェイ駅へ戻ることにします。時計はすでに3時を過ぎているのに、まだ山頂を目指す家族連れがあえぎながら登ってきます。ここは本格的な登山の山とハイキングの山が同居しているところのようです。
黒岳のお花畑を黄色に染める花はチシマノキンバイソウ、紫色の花を付けたトリカブトは大雪山の特産種ダイセツトリカブトでしょうか。清白色の花を付けたフウロウソウは北海道の高地に咲くトカチフウロウです。ハクサンイチゲも数は少ないが白い花を付けていました。
黒岳山頂の砂礫地にも北国の夏の花々が咲き乱れています。青紫色の花を付けたイワギキョウやタルマエソウの別名を持つイワブクロなど、花の種類も豊富なようです。