大室山と加入道山は西丹沢に位置する山で、山梨と神奈川の県境をなす稜線上の頂です。大室山は大群山とも書かれています。ネットなどを探すと群、室、牟礼などは古い朝鮮語で山を意味する言葉で、大群山は大きな山を意味する名前とか。伊豆の大室山を始めとして、大室山、牟礼山、室山と名付けられ山は数多くあるようです。
また加入道山も珍しい名前の山です。MyTown山梨によると「このあたりの奥山で往古より野生の獣、ことに鹿なども多く、それがため「鹿入道」の名が付いたとも伝えられるが定かではない。・・・」と紹介していました。この山域は曰くのありげな名前の山が多いところです。
道志村役場付近から道志の湯を左手に眺めながら林道を登ると加入道山登山口の大きな駐車場にたどり着きます。この時期、道志側から山頂を目指す人は多くないようで、広い駐車場にも1台の車が停まっているだけでした。
登山口からはヒノキ林の植林帯の中を登り始めます。ここは横浜市の記念樹として植林を行っているところのようで、西区や青葉区などの標柱が建てられています。鹿が多いのかシカ除けの柵が張り巡らされ、登山道の途中には柵を乗り越えるための階段が設けられていました。
落ち葉を踏みしめながら雑木林の中に続く尾根道を登って行きます。しばらく登ったところには立派な東屋が建っていました。1/25000地形図に示された登山道はこの下の沢を登り、白石峠へと登って行くようです。しかし踏み跡のような道は利用する人も少ないようです。
登山道は雑木林と杉林の中を稜線へと登って行きます。時々視界が開け目の前に鳩ノ胸山の意外に大きな山頂が見え隠れしています。
右手が崩壊して切れ落ちた斜面を巻くように登ると稜線にたどり着きました。右手に向かう道は白石峠を経て城ヶ尾峠、菰釣山へと続いている道です。
ここで道を左に、冬枯れの梢の先に道志の山々を眺めながら明るい尾根道を登ると加入道山の山頂にたどり着きました。縦走路の通過点のような山頂は木立に覆われ、山頂を示す標柱と三角点があります。山頂の先には立派な避難小屋もありました。
落ち葉に覆われた山頂はひっそりとしています。しばらくすると犬越え路から大室山をまわってきたのか、単独行のハイカーがやってきました。一般の交通機関を利用すると、道志側からのアプローチは難しいようで、西丹沢自然教室から大室山、加入道山を経て畦ヶ丸に縦走する人が多いようです。
加入道山からは大室山に向かいます。一度小さく下って登り返した小さなコブは前大室山。左手には道志村へと下って行く道が分かれています。
ここからは明るい雑木林の中を緩やかに下って行きます。たどり着いた鞍部は破風口で、左右が切れ落ちた露岩はその名の通り風が吹き抜けるところです。
破風口からは大室山への登り返しが始まります。明るい稜線を登る登山道には木の階段が整備されているものの、真っすぐに登って行く急坂はなかなか疲れる登りです。振り返ると曇り空の下に今越えてきた加入道山、その奥には霞んだ御正体山を見付けることができます。残念ながら富士山は低い雲の中で、大きな山裾だけが広がっていました。
たどり着いたところは大室山の肩で、山頂はその先の小さなコブの上のようです。山頂直下はコバイケイソウなどが群生しているようで、自然保護のためか木道も敷かれていました。
たどり着いたところは犬越路に向かう分岐点です。この付近は展望が良いところなのか数組のグループが昼食を楽しんでいました。
大室山の山頂は稜線をしばらく進んだところにあります。木立に覆われた山頂は縦走路上の小さな広場といったところで、山頂の標柱と三角点が建っていました。この山には三角点の標石のほか県界の標石なども設けられているようです。三角点の近くにあった標石にも何かの文字が彫られているようですが良く判りませんでした。
山頂からは道志側へ下る道が続いています。ガイドブックなどによると久保近くの登山口から山頂を目指すのが比較的近いとか。ネットなどによると久保つり橋から山頂を目指している山行記録も多く見付けることができます。
山頂からは往路たどり車を停めた登山口を目指します。すっかり葉を落とした梢の先からは午後の日を浴びた道志の山を眺めることができます。山腹を縫うように林道が続く稜線は赤鞍ヶ岳でしょうか。この稜線を歩いたのはもう10年以上も昔の春のことです。厳道峠から長い稜線を赤鞍ヶ岳へと登って行きましたが、左手には大きな大室山が横たわっていたのが記憶の中に残っています。
加入道山の山頂で一休みしたのち、登山口を目指し下って行きます。遅くなった午後の日を浴びた鳩ノ胸山が目の前にそびえていました。