秋山二十六夜山は山梨百名山にもその名を連ねる山で、近くの道志にある二十六夜山と区別するため、秋山二十六夜山と呼ばれています。
中央自動車道の上野原インターから桂川を渡り秋山街道と呼ばれる山間の道を都留市へ。青空の下には真っ赤に色付いたカキが秋の深まりを教えています。二十六夜山へは山麓の浜沢や尾崎から登山道が開かれています。その一つガイドブックなどにも紹介されている浜沢のアオゲラの森キャンプ場へ。シーズンオフのキャンプ場は閑散として人影さえもありません。
駐車場からキャンプ場の中の舗装された道を登り始めます。左にはこれから登る二十六夜山が真っ青に晴れた秋空の下に頭を持ち上げています。道端に立つ標柱に導かれながら急な雑木林の坂道を登って行きます。登山道の途中には椅子が置かれた東屋も建っていました。
紅葉に覆われた尾根を登って行く急坂に汗を流すと、雑木林の稜線にたどり着きました。さらにしばらく登ると赤鞍ヶ岳へと向かう道を右に分け、狭くなった稜線を登って行くようになります。左手には葉を落とし始めた梢の先に倉岳山や高畑山、その奥には扇山もそびえています。振り返ると真っ白な雪帽子を被った南アルプスの稜線が見え隠れしています。
小さな岩を越えるとひと登りで946mの小さな頂にたどり着きました。ここから一度鞍部に下ったのち、ヒノキの植林帯と雑木林間を二十六夜山へと登り返します。カサカサと枯れ葉を掻き分けながら歩く心地良い尾根道です。
やがて二十六夜塔への道を左に分け、雑木林の中を進むと二十六夜山の山頂です。木立に覆われた山頂は梢の先から扇山など見え隠れするものの、展望はあまり期待できません。木漏れ日を浴びる山頂は思いのほか寒く、そろそろ道志の山も晩秋の気配が近付いているようです。
山頂からは尾崎の集落に下ることにします。しばらく下った雑木林の広場にポツンと二十六夜塔が祀られていました。
この山の名前にもなった二十六夜待ちは旧暦の1月と7月の26日に行われる夜月待ちの行事です。夜半すぎに出る月はその光が三つに分かれ、阿弥陀・観音・勢至(せいし)の三尊の姿が見え、その月は見るものに幸せをもたらすとか。江戸時代には広く二十六夜待が行われ、海を臨む高台で月の出を待ち徹夜したと言います。二十六夜塔が祀られたこの広場でも山麓の人たちが月待ちの行事を行っていたのでしょう。
ここからはなだらかに下って行く雑木林の尾根道です。やがて暗い杉林の中をジグザグに下って行くと荒れた沢にたどり着きました。今年の台風で斜面が崩れたのか、太い杉が河原に積み重なっていました。
たどり着いた尾崎の集落は今が紅葉の真っ最中です。赤く色付いたカキの実の先に紅葉の山並みが広がっていました。