東京近郊の山でありながら、アプローチの便も悪く日帰りの難しい奥道志の山々。今回はその中でも最深部に位置する巌道峠から赤鞍ヶ岳、朝日山へと続く稜線に早春の奥道志を訪ねてみることにしました。
新宿から中央線の普通電車で上野原駅へ。駅前からタクシーで巌道峠へと向かいました。たどり着いた巌道峠はすでに標高は約790m。目指す赤鞍ヶ岳への登山道は右手の尾根へと登っていきます。
登山道を登り始めしばらくすると、青空をバックに白い雪を被った富士山がその雄大な姿を見せてくれます。桧の植林帯の中をたどる急な坂道をひと登りすると、登山道は尾根筋をたどるなだらかな道に変わります。道の両側には春の野を飾るスミレが今を盛りに咲き乱れています。まだ芽吹きが始まっていない梢の先から、前道志から陣馬高原へ続く山々が明るい春の日を浴びていました。
しばらく歩きやすい尾根道をたどると、アンテナの建つ御牧戸山の頂上。道志川を隔て目の前には加入道山と大群山の大きな稜線。その隣には丹沢最深部の檜洞丸と蛭ヶ岳を手に取るように眺ることが出来ます。
御牧戸山からは赤鞍ヶ岳へと尾根道をたどって行きます。小さなアップダウンも多く、それなりに体力が必要な尾根道です。やがて笹ヤブの道を巻くように登り詰めると、気象庁の雨量計やアメダスが設置してある赤鞍ヶ岳の山頂です。笹ヤブを切り開いた山頂からは、右手に百倉山、扇山などの中央線沿線の山と、その後ろに連なる奥多摩の山。滝子山、雁ヶ腹摺山の稜線の向こうに甲斐駒ヶ岳や北岳などの南アルプスの山々が白い雪の帽子を被っています。さらにその手前には山頂にアンテナを載せた三ツ峠山。木々は煩いものの大きな展望が広がっていました。
赤鞍ヶ岳からは朝日山を目指すことにします。幾つかの小さなコブに汗を流しながらたどり着いたところは秋山峠。明るく開けた峠からは竹之本への下山道が下っています。ここからの展望も素晴らしく右手に朝日山とこれから続く菜畑山と今倉山。その後ろには御正体山の大きな山頂。白い雪を被った富士山もその大きな姿を目の前に見せてくれます。
峠からしばらく登ったところが朝日山の山頂です。山頂は雑木林に包まれ展望は期待できません。ここでコッヘルを出して昼食としました。
昼食の後、秋山峠から竹之本へと下ることにします。秋山峠からの下りはかなり急な坂道です。赤松林の入道山を越え下りも少し緩やかになってくると、程なく竹之本のバス停に飛び出しました。ここから月夜野へと向かうバスは16時20分。1時間以上の待ち時間があります。昔懐かしい雑貨屋で買ったビールを片手に、思いのほか交通量の多い舗装道路を久保まで歩くことにしました。
奥道志の山は今が春の花の真最中です。お馴染みのスミレはタチツボスミレ、葉がギザギザしたピンクのスミレはエイザンスミレ、白い色のスミレはヒゴスミレでしょうか。尾根道はたくさんのスミレに彩られていました。
落ち葉の陰には小さなフデリンドウが花を付けています。このほかシロバナエンレイソウや、かわいらしいチゴユリなども咲いていました。下山した竹之本の畔道には、たくさんのムラサキケマンが紫色の花を付けていました。