浅間隠山という変わった名前の山の名を耳にしたのは浅間山の周辺に足跡を残し始めたころ。黒斑山や水ノ登山、篭ノ登山、湯ノ丸山などに足繁く通っていたころです。その山名は、群馬県側から見ると浅間山を隠す位置にあることから名付けられたということは容易に想像できます。
何度かこの山に登ろうと思っていましたが、標高があまり高くないこともあり、暑い時期には辛そうな山という先入観から、今日まで訪れることができないままになっていた山です。
たどり着いた二度上峠近くの道端に車を停め、落葉松の中の登山道を緩やかに登り始めます。しばらく登ると登山道は稜線の上に飛び出しました。唐松林の中から、これから登る浅間隠山がまだ芽吹きが始まっていない茶色の山肌を見せてくれます。やがて登山道は岩渕山と浅間隠山の鞍部にたどり着きます。里ではようやく桜の花が咲く時期。しかしこの付近はまだ芽吹きの時期にはしばらくの時が必要です。
茶色の落ち葉を踏みしめながら唐松林の中をしばらく進むと浅間隠山への登りが始まります。途中、登山道は幾つかに枝分かれしていました。どちらの道も山頂へと続いているようですが、指導標も整っていないようで多少不安になる道です。急な坂道をひと登りすると、明るく開けた山頂の肩にたどり着きました。ここからは潅木に覆われた明るい稜線。細くなった稜線をひと登りすると目指す浅間隠山の山頂です。
山頂からはよく晴れ渡った青空の下、さえぎるもののない広い展望を楽しむことができました。目の前には山頂から白い噴煙を上げる浅間山。山腹にかけてはまだ白い雪に覆われています。登ってきた登山道の先には稜線上のピークである鼻曲山。鷲鼻のような特徴のある山頂は遠くからでもそれと判る山です。さらに目を凝らすと青く連なるスカイラインの中に御座山や金峰山、国師ヶ岳など奥秩父の山並みが霞んでいます。あまりはっきりとは判らないものの、国師ヶ岳の左隣には富士山が霞みの中に浮かんでいるようです。振り返るとまだ白い雪を抱いた四阿山。さらに右隣には草津白根、岩菅山などの草津の山並みが広がっていました。
山頂での展望を楽しんだ後、往路をたどり登山口へ下っていくことにします。この山には幾つかの登山コースが開かれているようで、二度上峠から登ってくる道のほか、北軽井沢の鷹繋や栗平峠から登ってくる道、倉渕村の滑川から登ってくる道などが開かれています。
急な坂道を下っていくとやがて岩渕山と浅間隠山の鞍部にたどり着きます。ここから落ち葉に覆われた落葉松林の中を小さく登り返すと北軽井沢への分岐点です。地図を見るとこの分岐点から岩渕山の肩を通り駒髪山、二度上峠に抜ける道があようですが、熊笹に覆われ道らしきものも見当たりませんでした。仕方なく、先ほど登ってきた道をたどり、車を停めてある登山口に戻ることにしました。