日本百名山のひとつに数えられる美ヶ原、最高点は王ヶ頭ですがその傍らには2008mの標高をもつ山に王ヶ鼻があります。2008年の山としてインターネットに紹介されている記事が目に付き何かの席で話題になっていました。今回は2008年の山を訪ねる山行です。
上信越自動車道の佐久インターから一般道をたどり扉峠へ。たどり着いた扉峠からよもぎこば林道へと下っていくことになるのですが、途中で道を間違えてしまいました。しばらく走った橋の上からは錦糸の衣装をまとった山肌の先に鉢伏山、その右手には真っ白な雪を頭に載せた北アルプスの山々を見ることができました。
三城牧場の駐車場からは落葉松のキャンプ場の中を登って行きます。本来の登山道は左手の沢沿いに登っていくのですがキャンプ場の中の道はなかなか判りにくいもので、登山口を探すのにしばらく手間を食ってしまいました。
登山道は晩秋の色を濃くする林の中を緩やかに登って行きます。カラマツの林は錦糸に染まり、真っ青な秋空の下にマユミが赤い実をつけています。茶臼山へと登っていく道を右に分ける広場は百曲りの登り口です。
百曲りの登山道は唐松林の中をジグザグに登って行きます。ジグザグを繰り返しながら高度を上げていくと視界が開け、真っ赤な実をつけたマユミの梢の先に鉢伏山の大きな稜線がそびえています。
ジグザグを繰り返しながらさらに高度を上げていくと、稜線直下の岩壁が目の前に迫ってきます。ザラザラと崩れやすい岩に覆われた急坂にひと汗を流すと広く開けた美ヶ原牧場にたどり着きました。「登りついて不意に開けた眼前の風景に、しばらくは世界の天井が抜けたかと思う」と表現した尾崎喜八の感動はまさにこの稜線の景色を詩っているよのでしょうか。
すでに牛の放牧は終わっているようで、閑散とした牧場になかには動くものは見当たりません。青空の下に長く連なるのは八ヶ岳の山並、ひときわ高く頂を空に突き上げているのは主峰の赤岳。その周辺は白く雪化粧をしているようです。さらに目を右に向けると、小さな富士山が霞みの中に浮かんでいました。ここから富士山までは110km、やはり100kmを超えるとクッキリと澄んだ富士山を眺めるのは難しいようです。
予定では美しの塔や山本小屋に立ち寄ってから王ヶ頭へ向かおうと思っていましたが、気温もかなり低くなっています。今回は塩くれ場で道を左に折れ、直接王ヶ頭に向かうことにしました。
たどり着いた王ヶ頭ホテルはこの時期も営業しているようです。暖房の入っている食堂に入らせてもらい温かいうどんを買い求め昼食としました。
昼食ののち王ヶ頭の山頂へ。林立するテレビアンテナの傍には小さな石祠と山頂を示す標柱が建っています。この山もまた古い信仰の息づくところのようで山頂に祀られた社は御嶽山神社とか。全国に広がる御嶽山信仰の神社の一つのようです。
ここからは王ヶ鼻に向かいます。武石峠から登ってくる車道をしばらく歩くと王ヶ鼻への道が分かれています。気温も零度に近付いているようで水たまりには薄く氷も張っていました。
広く視界が開ける王ヶ鼻は標高2008m。ここもまた山岳信仰の名残を残すところで、注連縄をはり巡らせた中に苔むした石碑や石仏が置かれていました。目の前が切れ落ちた頂の先に立つと広い視界が開けてきます。百曲りから続く切れ落ちた岩壁、落葉松の山肌の先には鉢伏山の大きな稜線、その奥には木曽駒ヶ岳の頂が雲の中にかすんでいました。
王ヶ鼻からは三城牧場へ下ることにします。王ヶ頭までもどりカラマツの林の中をジグザグに下って行きます。ジグザグを繰り返しながら高度を落としていきます。振り返ると王ヶ頭の岩壁が曇り空の下にそびえたっていました。