福島と新潟の県境にあって、夏でも雪が残る山。鬼ヶ面山の豪快な岩場、浅草岳の名前の由来ともなった山頂周辺の草原と高山植物の群落など、中級山岳として浅草岳は変化に富んだ山です。
なによりも浅草岳を有名にしたのはヒメサユリ。福島と新潟の県境の山に自生するピンクの百合は、それを見るために訪れるハイカーも多いと言います。登山口は田子倉の奥只見沢から登るものや、入広瀬のネズモチ平から登るものなど幾つかのコースが開かれています。今回はネズモチ平から山頂を目指すことにしました。
駐車場からアスファルトの道をしばらく登ると小さな標柱が建つネズモチ平の登山口です。ここからは石がゴロゴロと転がる山道が始まります。雑木林の中を登る道は太陽の光をさえぎってくれるものの、汗まみれの登りを余儀なくされる道です。ますます急になる登山道は前岳の頂を巻くようにして高度を上げていきます。途中には小さな岩場なども現れる急な登りです。
道端で小休止ののち、ふたたび急な登りに汗を流します。傾斜が幾分緩やかになってくると、灌木の中を登って行くようになりますがなかなか桜ソネの分岐にはたどり着きません。振りかえると雲に頭を隠した守門岳が山肌に刻まれた岩場だけを見せていました。
たどり着いた分岐点はキンコウカの黄色い花の咲く草原です。左へ折れる道は山頂へと向かう道、右の道は帰路に下って行く桜ソネへの道です。
分岐で一息を入れたのち、広く開けた稜線を山頂へと向かいます。目の前にはまだ溶け残った大きな雪渓が残っていました。付近はヒメサユリやトキソウの咲くところですが、花の時期が過ぎてしまったのか何も見つけることはできませんでした。木道を小さく下った後、浅草岳の山頂に向かい明るい稜線を登り返します。やがて山頂の表示板と小さな石祠が現れると浅草岳の山頂です。
小さな石祠には蛇が3匹、石の中に巣でもあるのか日向ぼっこの最中です。近づくとあわてて石の中に入って行きましたがこのような山の上で出会うのは嫌なものです。
曇り空の下では山頂からの展望は期待できません。晴れていればなだらかな稜線が続く新潟側と、鬼ヶ面山の垂直に切れ落ちた福島側の絶壁が一望できると言いますが、わずがにガスの中から田子倉湖が顔を出しているだけでした。
山頂で昼食ののち、桜ソネへと下って行くことにします。前岳の分岐まで戻り明るい稜線を下って行きます。キンコウカの咲く稜線をしばらく下り小さく登り返した頂がカヘヨボッチ(嘉平与ボッチ)、諏訪湖の高ボッチ高原などとおなじダイタラボッチの伝説にまつわる山名かもしれませんが詳しいことはネットにも見つけることができませんでした。
小さな頂で一休みしたのち、明るい稜線を下って行きます。それほど急な下りではありませんが、どこまでもダラダラと続く坂道です。緩やかに下って行く坂道にあき始めるころ、浅草の鐘が置かれた小尾根にたどり着きました。桜ソネの駐車場は鐘のすぐ下にありました。
ここからは林道を緩やかに下って行きます。道端にはガクアジサイやシモツケが咲いています。山頂付近にはあまり花に恵まれなかったようですが、この時期の山裾は花に彩られた山となっているようです。
しばらく下って行くと白崩沢です。傍にはこの沢で発生した遭難救助の時、雪崩で殉職した警察官や消防隊員を悼む石碑が建っていました。この山は遅くまで雪が残っていると同時に、雪崩などの危険も併せ持っている山のようです。
浅草岳を有名にしたのはヒメサユリ、すでに花の時期を過ぎたようでピンクの花を見つけることはできませんでした。このほか目立つ花はノギラン。花が過ぎると単なる枯れ草と思っていましたが白い花はなかなか綺麗です。 浅草岳は雪割草やカタクリの咲く山として有名です。しかしこの時期、低い山は花の種類も多くありません。それでも登山道わきには大きな山百合が咲いていました。