小金沢連嶺の東方に雁ガ腹摺山という変わった名の山があります。雁の群れが腹を摺るように渡ってゆく山と言うことから呼ばれているようですが、むしろ旧500円札の裏側に描かれた富士山を眺めることのできる山として知られています。
家を出発するのが遅れたこともありましたが中央自動車道はひどい渋滞。車はなかなか進んでくれません。仕方なく八王子のインターから一般道に降り大月へ。しばらく進むと右手に日本三大奇橋の一つである猿橋があります。猿が体を組んで渓谷を渡る姿から考案されたと言われる橋は、桂川の紅葉に映えなかなか見応えのある景観です。
真木の集落からは狭い県道を大峠へ。小さな東屋の建つ峠の駐車場はすでにたくさんの車で溢れています。左手に登って行く登山道は小金沢連嶺の黒岳への道。我々は右手の登山道をたどり雁ガ腹摺山を目指すことにしました。
登山道は赤や黄色に色付いた雑木林の中を緩やかに登り始めます。しばらく登るとブナやミズナラの林は茶色に色付いた葉を落とし、付近一帯はそろそろ晩秋の色を見せはじめています。しばらく登ると視界が開け、振り返る三ツ峠山の上に富士山が端麗な姿を見せてくれます。
やがて勾配も緩やかになってくると、カヤトの穂波が風に揺れる山頂の肩にたどり着きました。山頂からは500円札の裏に描かれている姿そのままに、三ツ峠山の上にかすむ富士山がそびえています。500円札の富士山が描かれたのは昭和17年。その当時、三ツ峠山の山頂にはテレビのアンテナは無かったようですが、今はたくさんのテレビのアンテナが林立しています。時の移り変わりは自然の景観までも変えてしまうようです。
山頂で昼食の後、富士山に別れを告げながら、車を停めた大峠に戻ることにします。登りはじめて約1時間20分。多少物足りなさはあったものの、山頂から眺める富士山は、山の楽しさを十分に満足させてくれるものです。