富士山の好展望台として知られる杓子山は山梨百名山にも選ばれた頂です。石割山などと同じように富士山に対峙することから、大きなすそ野を広げる富士山を一望できる山です。この周辺には富士山展望のビューポイントも多く、二十曲峠や高座山直下のカヤトの原には富士山に落ちる夕陽を狙い多くのカメラマニアが集まる所としても知られています。
忍野から別荘などが散在する林道を登って行くと二十曲峠です。この峠は御正体山からの帰り道に通ったことのある峠です。峠の駐車スペースには富士山に沈む夕日を狙うカメラマンが数人。この峠で夜を過ごそうとしているのかワンボックスには布団やコンロなどが積まれていました。
林道は暗いスギ林の中を緩やかに登って行きます。送電線の下を過ぎると程なく林道の終点にたどり着きました。小さな駐車スペースには地元ナンバーの車が2台停まっています。右手から大久保から登ってくる登山道を合わせるところで、テレビの中継塔が建っていました。
二十曲峠からは明るい雑木林の中に続く登山道を登って行きます。すでに葉を落とした梢の先には富士山が白い雪帽子を被ってそびえています。
立ノ塚峠の上で一休みしたのち再び広い尾根道を登って行きます。次第に傾斜を増す登りに汗を流しながら高度を上げていくと登山道は固定ロープが張られた岩場を登って行くようになります。木の根につかまりながら登り立った岩場はタキ沢ノ頭と言われるところで、目の前には大きな富士山がそびえています。
小さく下った登山道は再び露岩帯の急坂を登って行きます。山頂方向からは数組のハイカーが下ってきました。このコースは杓子山から鹿留山を経て立ノ塚峠に下るルートが多く利用されているようです。
急な登りに汗を流しながらたどり着いた稜線は子ノ神峠。細くなった稜線をたどると鹿留山の山頂にたどり着きます。雑木林に覆われた山頂には三角点があるものの展望には恵まれない山頂です。わずかに木立の間から御正体山から石割山へと続く稜線が見え隠れしていました。
子ノ神峠に戻ったのち尾根通しに杓子山へ向かうことにします。小さなピークを拾いながら下って行く登山道は大きな岩が。この上に立つと大きなすそ野を広げる富士山が目の前にそびえています。目を右に移すと霞んだ空の下に南アルプスの山々、その手前には節刀ヶ岳など河口湖周辺の山を見付けることができます。
鞍部から小さく登り返したピークが杓子山です。目の前が広く開けた山頂には杓子山とデザインされた鐘が建っています。この山頂は目の前にそびえる富士山を中心として広い展望を楽しむことができるところです。富士山の右手には十二ヶ岳や節刀ヶ岳など河口湖の湖畔にそびえる山々。その奥、霞みの中に溶け込むように続いている山々は南アルプスの赤石岳や荒川岳などの山々でしょうか。
山頂で展望を楽しんだのち高座山へ向かうことにします。しばらく下ったところが大権峠です。左手に下っている車道は大明見へと下って行く道です。以前、杓子山を訪れた時は大明見から杓子山の山頂へ向かいましたが、当時の登山道とは違う道を下ってきたようです。
大権峠からは高座山に向かいます。狭くなった稜線は露岩の目立つところで、小さなアックダウンを繰り返しながら徐々に高度を落としていきます。小さく登り返したピークが高座山。目の前には沈みかけた夕陽を浴びる富士山がそびえています。
夕陽の染まる富士山は朝日に赤く染まる赤富士に対して紅富士と呼ばれているようです。白く霞んだ夕陽に染まる姿もまさに絵になる富士ということができます。
高座山の山頂を下るとカヤトの原が広がっていました。ここは富士山に沈む夕日をカメラに収めるビューポイントの一つです。ここは地元の人たちがカヤトを取るところのようで、カヤトの原の中には幾筋もの轍が続いています。その先がビューポイントのようで数台の車が高台の上に停まっていました。
迫りくる夕闇に急かれるように急なカヤトの坂道を下って行きます。たどり着いた登山口から少し下ったところが鳥居地峠です。すでに早い秋の日は暮れ落ち、辺りは夕闇が支配しています。街灯もともらない忍野の町の中を下って行くと車の行き交う県道にたどり着きました。ここから二十曲峠に戻るのは時間的にもつらいものがあります。とりあえず県道脇のスーパーで買い物をしたのち、タクシーを呼んでもらいました。