日本200名山のひとつに数えられる乾徳山は、恵林寺を開いた夢窓国師が修行した山として知られる山です。乾徳山の山腹には夢想国師にちなんだ国師ヶ原の名前が、また乾徳山の山名も恵林寺の山号から名付けられたと言います。
登山口の大平牧場からは砂利の林道が続いています。やがて小さな導標から道を右に折れ山道を登りはじめます。一度林道に出ると登山口の大きな案内板が建っていました。ここまでは車なども登ってこられるようです。登山道は雑木林の中の階段を登って行きます。廃道になった林道が入り組んでいるようで分かりにくい登りです。
途中で左の林道に入ってしまいましたが、林道の先は三富富士見百景の案内板の建つ小さな峠に出てしまいました。目の前にはたなびく雲の上に富士山がそびえています。ここから富士山はおよそ50km。大きなすそ野を広げる富士山は見応えのある眺めです。
小休止ののち、扇平を目指すことにします。林道は緩やかに国師ヶ原へと下って行くようで、稜線に登っていく道は見当たりません。しかたなく富士見百景の峠に戻り、草原の斜面に残された踏み跡を頼りに稜線へ登って行きます。
たどり着いた稜線からは薄暗い林の中をたどる道が続いています。小さな岩場を超えるところもありました。なだらかな稜線をしばらく登ると広く開けた扇平です。国師ヶ原から登って繰る道を合わせる広い草原は休憩に良い所のようで、たくさんのハイカーがお弁当を広げていました。
扇平で昼食をしたのち、乾徳山の山頂を目指すことにします。登山道は暗い林の中を登って行きます。岩混じりの急坂に汗を流しながら山頂を目指す登りが続いています。途中には5mほどの小さな鎖場。大きな岩の脇を超え明るくなった稜線を登っていくと山頂を見上げる岩場の上にたどり着きました。岩陰には黄色い花をつけたイワインチンが咲いていました。
山頂直下には天狗岩と呼ばれる一枚岩の鎖場があります。右手には小さな梯子も付けられたまき道があります。今回もまき道のお世話になり山頂にたどり着きました。
狭い岩峰の山頂には石祠と山頂の案内版があります。腰を下ろすところもないため山頂から少し先の岩場で小休止です。目の前には五畳岩を頭に乗せた金峰山とそれから続く国師ヶ岳、北奥千丈の稜線。振り返ると乾徳山の岩峰の先、雲海の上に富士山が浮かんでいました。
下山は原生林迂回新道をたどり国師ヶ原へと向かうことにします。雑木林の中を下っていく道は思いのほかの急坂です。暗い道は針葉樹の中を下って行くようになります。今年の激しい雨のせいなのか道はかなり荒れています。目印の赤いテープがなければ道を見落としそうなところもありました。
道端で一休みしたのち、再び急な坂道を下って行きます。やがて急坂もひと段落すると白樺の林の傍に建つ高原ヒュッテにたどり着きました。ここからは富士見百景の峠に向い小さく登り返します。たどり着いた峠からは黒いシルエットになった富士山、振り返ると雲を巻き上げる乾徳山の頂がそびえていました。
富士見峠からは林道をたどり大平牧場へ。長い下りに飽き始めるころ大平牧場近くの民家の赤い屋根が落葉松の先に見えてきました。