奥秩父山塊の西南に位置する乾徳山は、塩山の恵林寺を開いたと言う夢想国師が修行した山と伝えられています。山腹には夢想国師に名前にちなんだ国師ヶ原が広がっています。また乾徳山の名前も恵林寺の山号から付けられたと言います。
中央線の普通列車で塩山駅へ。塩山から西沢渓行きの路線バスもありますが、すでに出発てしまった後です。仕方なく駅前からタクシーに乗り、登山口である徳和の集落に向かいうことにしました。
徳和の集落から指導標に従い右手の林の中を登り始めます。しばらくは林の中をたどる緩やかな登りが続きます。採石のために付けられた林道を横切り、しばらく登ると小さな銀晶水の水場にたどり着きました。
銀晶水からもなだらかな登りが続いています。右手を見ると木の間隠れに富士山の山頂が雲に浮かんでいます。山頂には未だ白く残雪を被っています。駒止めを過ぎる頃から徐々に傾斜もきつくなり、一歩々高度を上げて行きます。再び林道を横切りしばらくジクザクに登ると広い錦晶水の水場にたどり着きました。たくさんのハイカーが休憩をしていました。我々も冷たい水で一息を入れることにします。
錦晶水からは登りも緩やかになります。やがて前方が開けてくると夢想国師の名に因む国師ヶ原の湿原です。標高も1,660mmを越え、明るく開けた高層湿原には、紫色に群生するヒオウギアヤメ、遅いツツジの花、ツクバネウツギなど、可憐なオダマキの花も風に揺れています。正面にはこれから登る乾徳山の岩峰が、その大きな山頂をそびえさせていました。
国師ヶ原からは広く開けた草原の中の急な登りが始まります。振り返ると正面には雲に霞む大菩薩嶺の山並み、右手には笛吹川に添って塩山の町並みが広がっています。たどりついた広場が扇平、標高は既に1,750mを超えています。草原を吹き渡る心地よい風を浴びながら草原に腰を下ろすことにしました。
扇平からは、尾根伝いに山頂に向かうこととなります。林の中の道は次第に岩が多くなり、立ちはだかる巨岩の間を縫うように登って行きます。やがて最初の小さな鎖場、鎖を頼りに岩の上に登り、岩場の裂け目からこれ越えます。第2の鎖場は2段になった垂直の岩場。高さはおよそ5~6mでしょうか、距離は短いものの上段の岩場はホールドに適した岩角がなく、鎖だけを頼りに登らなければなりません。しばらく登り視界が開けてくると山頂直下の広場です。左手は大きく開け吹き上げる風が疲れた肌に心地好いところです。
山頂直下にはガイドブックにも紹介されている第3の鎖場です。長さ凡そ20mほど。垂直に切り立った岩場には、ホールドに適した岩角もあり何とか登れそうです。右手の樹林の中には巻道もありました。
たどり着いた山頂はゴツゴツした岩が積み重なる狭い頂です。正面は垂直に切れ落ち、遮るものがない360度の展望が眼を楽しませてくれます。ここでコッヘルを出し昼食としました。
山頂で展望を楽しんだ後、吹き上げる霧に追われながら下山を始めます。下山道は鎖場を避け原生林迂回新道より大平ヒュッテに向かうことにします。山頂より小さな鎖場を下り巨岩の間をすり抜けながらしばらく進みます。10分ほどで黒金山への分岐点。ここから道を左に取り原生林迂回新道を下って行きます。暗い林の中をたどる道は思ったより急な下り坂で、ゴツゴツした岩に足を取られそうです。急なガレ沢をしばらく下ってゆくと道も徐々になだらかになってきました。
暗い林の中をさらに下って行くと、やがて広く開けた国師ヶ原の一角にたどり着きました。古びた大平ヒュッテの前のベンチで小休止です。振り返る乾徳山はすでに山頂が雲に覆われていました。
大平ヒュッテより広い林道を登り返します。明るく開けた大平牧場からは、牧柵沿いにカヤトの林道を下って行きます。しばらく林道を下ったのち、右手の指導標から道満山に向かう山道に入って行きます。やがて道もなだらかになったところが道満山。林の中の目立たない山頂には1,312mの指導標と木のベンチがありました。
道満山からは暗い林の中を下って行きます。しばらく下ると急に視界が開けてきました。この鞍部が徳和峠。ここから右の林の中を下ることとします。道は非常に荒れおり、立ち木につかまりながら下って行きます。やがて舗装道路にたどり着くと徳和登山口のバス停です。凡そ20分の待ち合わせで塩山行きの最終バスが出ると言います。
国師ヶ原の明るい湿原は今を盛りに咲き競う花に溢れていました。湿原を紫色に彩るのはアヤメの群生。この他にもヤマオダマキやウツギなどが咲いていました。白い大きなギボウシが咲いていましたが何と言うのでしょうか。ギボウシも色々な種類があるようです。