風不死岳は今も噴煙を上げる樽前山と対照的に、ダケカンバなど明るい広葉樹に覆われた山です。山名の由来はアイヌ語のフップ・ウシ(トドマツの多い山)に風不死の漢字を当てはめたもので、風が死なずとは何とも面白い名前を付けたものです。
札幌市内から国道453号線を支笏湖へ。モラップ山の手前から針葉樹の林の中をしばらく進むと樽前ヒュッテの建つ七合目の駐車場です。春先に比べこの山を訪れる人は少ないようですが、もう数十台の車が駐車場を埋めていました。
駐車場で車の整理をしているボランテアのお爺さんの話では、縦走するならば風不死岳を先にしたほうが良いとか。風不死岳から苔ノ洞門へ下る道もあるが、熊が出ることがあるとか。もともと熊の住む領域に人間が入り込んで行くのですが、山の中では出会いたくはないものです。
樽前ヒュッテ手前からダケカンバの林の中をしばらく進むと視界が開け、登山道は樽前山山麓の砂礫地の中を進むようになります。お花畑となっている一帯にはシラタマノキが白い花を付けていました。やがて登山道は風不死岳と樽前山の中間にある932メートルの頂を目指し、雨で侵食された小沢をゆっくりと登って行きます。明るく開けた地形だけあって、近くに見える頂もかなりの距離があります。
やがて樽前山に向かう道を左手に分けると、登山道は砂礫地の中を風不死岳の山裾へと下って行きます。さらにしばらく進むと、明るいダケカンバ林の中に、風不死岳登山口と書かれた手作りのゲートが建っていました。ここからは、山頂へ向かう急な登り坂が始まります。途中の岩場には長い鎖が張ってあるところもあります。
2番目の鎖場を越えると登山道は平坦な笹原の中を進むようになります。さらにしばらく進むと目の前に山頂のコブが現れます。風不死岳は小さな頂が並ぶ双耳峰で、三角点のある山頂は支笏湖側にありました。目の前が支笏湖ということもあり、山頂からは遮るもののない広い展望が広がっています。支笏湖をはさんだ対岸には恵庭岳、振り返ると逆光を浴び黒いシルエットとなった樽前山の大きなドーム。まさに絵になりそうな景色です。
山頂からは樽前山との分岐点を目指し急な坂道を下っていきます。砂礫の道を登り返すと外輪山の一角。それほど急な登りではないものの、疲れはじめた足にはかなり辛い登りです。
外輪山からは黒い溶岩が積み重なる大きな溶岩ドームを目の前にしながら火口原の中を半周すると、今も地底の息吹を吐き上げる噴気口。付近の岩は噴気で変色し、あたかも恐竜の卵のようです。火口原の中をたどる道は緩やかに外輪山の上へと登って行きます。たどり着いた外輪山の稜線をしばらく登って行くと東山の山頂です。
ここ東山からも広い展望が広がっています。正面には大きな樽前山のドームと砂礫の火口原。その向こうには山頂を雲に隠して後志羊蹄山がそびえています。右手には今下ってきた風不死岳。その向こうには支笏湖。緑の樹海の中に続く道の先は千歳の町が広がっていました。