岩嶺が連なる男性的な南八ヶ岳と、池塘や森林など女性的な北八ヶ岳を南北に分ける麦草峠の周辺には、伸びやかな草原と縞枯現象で有名な縞枯山があります。縞枯れ現象はシラビソなどの林が縞のように立ち枯れる現象で、その原因は一定の方向から吹く強い風という説もありますが詳しいことは判っていないようです。
中央自動車道の諏訪インターから一般道へ。ビーナスラインの別名を持つ国道299号線を蓼科高原へと向かって行きます。ペンションや別荘、保養所などが点在する蓼科高原を過ぎると、道はカーブの多い山岳道路になってきます。明るい草原の中、カーブを繰り返しながら高度を上げて行くと、やがて大きなヒュッテの建つ麦草峠にたどり着きました。
麦草峠の駐車場に車を停め、樹林帯の中の道を茶臼山へと登り始めます。しばらくはコメツガの林の中をたどる緩やかな登りが続きます。やがて登山道は最初の頂である中小場平への急な登りに差し掛かります。急な坂道をひと登りすると展望が開け、正面にこれから向かう茶臼山。振り返るとなだらかな丸山と、これから続く八ヶ岳の山々。茶臼山の山頂付近には、立ち枯れしたシラビソの織り成す縞枯模様が広がっていました。
たどり着いた茶臼山手前の展望台からは素晴らしい展望が広がっています。正面にはこれから向かう縞枯山のなだらかな頂と、その向こうに頭をもたげる横岳や蓼科山。はるかに雲の上に霞むのは北アルプスのスカイラインです。真っ青に晴れ渡った青空の下に広がる、なかなか雄大な展望です。今日はこの岩場でコッヘルを取り出し昼食としました。
昼食の後、尾根通しの道を進むと茶臼山の山頂にたどり着きます。付近はシラビソの林に囲まれ展望はあまり良くありません。ここから按部に下り、暗い林の中を緩やかに登り返すと縞枯山の展望台にたどり着きました。さらに、しばらく進むと縞枯山の山頂です。小さな指導標が立っている山頂はシラビソの林に覆われ展望はまったくありません。
縞枯山からは右手の急坂を雨池峠へと下って行きます。やがて喧騒が近づいてくると小さな按部である雨池峠にたどり着きました。右手の道は二子池の林道へと下る道です。今日はここで道を左に。八丁平と呼ばれるカヤトに覆われた伸びやかな草原をたどると、右手に坪庭が現われます。
横岳の溶岩台地の上に広がる坪庭はロープウェイで気軽に登れることから、スニーカーやハイヒールを履いた軽装の観光客で溢れています。付近一帯にはたくさんの高山植物が咲いていました。しかしこの喧騒の中、大きなリュックを背負っての散策は少し恥ずかしいものです。
ピタラスロープウェイからは、縞枯山の山麓に広がる伸びやかな草原の中を麦草峠へと戻ることにします。良く整備されている遊歩道のような道はアップダウンも少なく歩きやすい道です。左手に縞枯山と茶臼山の山頂、右手には南アルプスの山並みを眺めながら、心地好いトレッキングを重ねると中間点である五辻にたどり着きました。大きな指導標と東屋が一つ、カヤトと笹の草原にアクセントをつけていました。
ここからは狭霧苑地に向かうことにします。しばらくすると道はコメツガの林に中をたどるようになります。やがて大石峠への道を左に分けしばらく進むと今朝車で登ってきた国道299号線です。小さな池の辺にベンチやキャンプ場などのある狭霧苑地。夏の頃にはたくさんのキャンパーで賑わっていたでしょうが今はひっそりと静まり返っていました。ここから麦草峠までは暗い樹林帯をたどる登りが続いていました。