観光ポスターや絵葉書などでもお馴染みの摩周湖の湖畔にそびえる火口壁のような山がカムイヌプリの別名を持つ摩周岳です。七色に色を変える湖面に浮かぶ小島カムイシュと、荒々しい火口壁を湖面に映すカムイヌプリは、まさに神秘の湖にふさわしい景色です。
この山への登山道は二つあり、観光客で賑わう摩周湖の展望台から摩周湖の外輪山をたどって行くコースと、近くの西別岳から縦走するコースとが開かれています。インターネットで調べてみると西別岳はあまり標高は高くないものの高山植物に恵まれた山。多少時間は長くなるようですが、西別岳から摩周岳を縦走する変化に富んだ山旅を楽しんでみました。
道道885号養老牛虹別線から指導標に従いダートな道を進むと西別岳の登山口にたどり着きました。所々に小さな指導標が建っているものの、あまり分かりやすい道ではありません。登山口の広場の傍には、人気の山と言うこともあって立派な山小屋とトイレが建っていました。
登山道は明るい雑木林の中を緩やかに登って行きます。しばらく登ると明るい笹の斜面を真っ直ぐに登っていく急な登りが始まります。ここはがまん坂と言われるところ。かなり気温も上っているのかすぐに汗が噴出してしまいます。道東の夏はそれほどの暑さにならないであろうと思っていたのですが、気温もすでに25度を越えているようです。標高僅か1,000mに満たない山で、この暑さはかなり辛いものがあります。
しばらく登ると第1花園と言われるお花畑です。今斜面に咲き誇る花はトウゲブキ、ツリガネニンジンも紫色の花を付けていました。第2花園を過ぎると小さなリスケ山の頂です。気温はかなり上っているようで、摩周湖は薄い雲に覆われその姿を見せてくれません。
リスケ山からは西別岳に向かいます。なだらかな稜線の先の鞍部はごくらく平。付近には紫色の小さな花を付けたチシマセンブリが咲いていました。紫色の花弁に小さな白い斑点を付けた花はなかなか可憐なものです。ごくらく平から小さく登り返したところが西別岳の山頂。巻き上がる雲の下から目指す摩周岳の岩壁と摩周湖が顔をのぞかせてくれました。
西別岳で一休みした後、明るい笹の稜線を摩周岳の分岐に向かって下って行きます。暫くすると登山道は明るいダケカンバの林の中を緩やかに下っていくようになります。遊歩道のようななだらかな道は歩きやすいものの分岐まではかなりの距離があります。笹は綺麗に刈り取られていますが、あまり人が入っていないようで、道は草に覆われているところもあります。やがて摩周湖展望台からの道を合わせると分岐点です。指導標によるとここから摩周岳へは30分ほどの道程とか。一度小さく下った登山道は、摩周岳の火口壁の渕を緩やかに登り始めます。しばらく登ると大きな火口壁の渕に立つ展望台です。右手には荒々しい岩壁をめぐらせた摩周岳の山頂。目の前には大きな口を開けた噴火口。摩周湖の展望台からは想像もできない眺めが目の前に広がっていました。
ここからは山頂直下の急坂を登って行きます。折からの暑さで汗は滝のよう。山頂直下で一息を入れた後、最後の急坂を登りつめると狭い摩周岳の山頂にたどり着きました。
目の前は崩壊した火口壁、明るく晴れ渡った青空の下には摩周湖が青い水をたたえています。霧の摩周湖と言われるように、霧に包まれることが多いこの湖も、何度か訪れたたびにその顔を見せてくれます。最近は気候の変化の為か霧に包まれる日も少なくなってきたと言います。振り返ると青空の下に斜里岳が丸い山頂を持ち上げていました。
山頂で昼食の後、往路をたどり登山口に戻ることにします。登りに比べ下りは汗もあまり出ることも無いものの、長い下りはやはり疲れるものです。西別岳の長い登りに汗を流すと山頂です。振り返ると黒いシルエットとなった摩周岳の頂がそびえていました。
西別岳からは登山口を目指して下って行きます。リスケ山は山頂の巻き道を通り、長いがまん坂を下って行きます。急な下りに足が疲れ始める頃、目指す登山口にたどり着きました。
西別岳に登って行くがまん坂は夏の花が咲き乱れるお花畑です。今明るい明るい斜面の主人公は黄色いトウゲブキ、斜面を黄色に染めるように大振りの花が咲き乱れていました。道端にはお馴染みのツリガネニンジンも咲いています。
リスケ山から西別岳に向かう稜線にはチシマセンブリが小さな紫色の花を風に揺らしていました。星のような小さな花に濃い紫色の斑点が入る花はなかなか綺麗なものです。白い花を付けたチシマセンブリも咲いていました。
摩周岳の岩陰には吹き抜ける風を避けるかのように、澄んだ水色の花もすがすがしイワギキョウが咲いています。お馴染みのイワブクロも大きな群落を作っていました。