日本二百名山の一つに数えられている岩菅山は志賀高原スキー場のツアースキーなどで知られた山です。付近の横手山、焼額山や東館山などはスキー場として開発が進んでいる中、この山域はまだ開発から取り残され、自然が残っている山です。
聖平からアライタ沢を登って行く道が良く利用されているようですが、今回は東館山の山頂へロープウェーで登り、ここから寺子屋峰、ノッキリを越え、山頂へ登るコースを歩いてみました。
国道292号線の志賀トンネルの手前から急な坂道を下っていくと発哺温泉のロープウェイ駅です。今日は学生の団体客があるため8時前から運転を開始しているとか。急いでリュックザックを背負い改札口に向かうことにします。
二人乗りの小さなゴンドラは、東館山頂駅にまで我々を運んでくれます。山頂周辺は志賀高原に咲く高山植物を紹介する東館山植物園になっていました。
ここからは広いスキー場の連絡道路を登って行きます。たどり着いた広いゲレンデは寺小屋スキー場。左手には人口降雪機のパイプが並んでいます。山頂直下の急坂を登ると寺小屋峰の小さな頂です。ここからはなだらかな稜線歩きが始まりました。しばらく稜線を歩くと金山沢の頭。右手には赤石山を経て四十八池へ向かう道が分かれていました。
金山沢の頭からは再びなだらかな稜線をノッキリへと向かって行きます。目の前には岩菅山の三角形の頂がそびえています。今日は湿度が高いのか期待していた視界は今ひとつ。晴れていればこの稜線から横手山や草津白根山なども見えると言いますが、霞んだ空に隠れ何も見えません。幾つかのアップダウンを繰り返すと目指すノッキリです。アライタ沢から登ってくる道を左手から合わせるこの分岐には大きなコメツガの木が数本。この木陰に腰を下ろし小休止です。
小休止の後、山頂へと登っていく急な坂道に汗を流すことにします。視界が開けた稜線から振り返ると、東館山のロープウェイ駅から続く長い稜線が見えています。小さな梯子を登るとほどなく岩菅山の山頂です。
広く開けた山頂は裏岩菅山への縦走路の上の頂で、小さな祠と赤い屋根の非難小屋が建っていました。目の前は急な岩場となって切れ落ち、さえぎるもののない開けた山頂です。しかし期待した志賀の山々は霞んだ夏空に溶け込み、わずかに東館山から続く稜線が見えているだけです。
しばらくすると学生の一行が山頂に上がってきました。およそ100人程度。3、4人の先生に引率された登山遠足のようです。広い山頂もたくさんの学生で何処かの観光地といった状態です。
山頂で昼食の後、アライタ沢に下ることにします。腰を上げると、空から大粒の雨が落ちてきました。慌てて雨具を着て山頂を下りることにします。
途中、頭上が急に光ると同時にゴーンと雷の音。夏山での落雷は山岳事故の一つに数えられていますが、このような稜線での雷は恐ろしいものです。まさにバケツをひっくり返したという形容が当てはまる激しい雨に、ポケットに入れていた携帯電話とデジカメはすっかり濡れてしまいました。携帯電話はあまり問題がないようですが、デジカメは液晶が曇り、スイッチ類も上手く動作しません。雷に急かれるように急な坂道を下りノッキリの分岐点へ。大きな木の下ではすでに数名のハイカーが雨宿りをしていました。
ノッキリの分岐点からはアライタ沢へ下っていくことにします。広葉樹の林の中を緩やかに下って行く道は、折からの雨で水溜りや小さな川ができ、登山靴の中も雨水でジャブジャブ状態です。急な坂道を下るとアライタ沢です。数名のパーティが濡れた雨具を着替えていました。
アライタ沢からは上条用水路に沿ったなだらかな道を一ノ瀬に向かいます。しばらくなだらかな道を歩いていくと右手に聖平の登山口へ下っていく道が分かれています。ほとんどの人は登山口に下っていくようで、ここから一ノ瀬に向かうのは我々だけか。
そろそろ空も晴れ、雨も小粒になってきました。やがて道はスキー場の斜面から一般道を緩やかに登って行きます。真っ青に晴れた空の下にそびえる西館山を見ながらアスファルトの道を登っていくと高天ヶ原です。車を停めた発哺のロープウェイ駅までは、まだしばらくアスファルトの道を歩くことになります。
東館山の山頂一帯は近くに咲く高山植物を集めた植物園になっています。今この山頂に咲く花はニッコウキスゲ、コマクサ、イブキジャコウソウ、タカネナデシコ、シモツケ、タテヤマウツボグサ、ハクサンフウロウ、イブキトラノオそれとバイケイソウなど。コバキボウシのほかにナメルギボウシという花付きの良いギボウシも咲いていました。
寺子屋峰からノッキリに向かう稜線一帯は高茎草原になっているようで、マルバタケブキやオオカサモチが大きな花を付けていました。ウドの仲間は形がよく似ていることもあり、その名が判りにくい花の一つです。