会津駒ヶ岳は深田久弥氏の日本百名山に名前を連ねる東北の秀峰です。また新花の百名山にもハクサンコザクラの咲く山とし紹介されている山です。ハクサンコザクラはエゾコザクラの変種と言い、比較的大きな花を付けることからハクサンコザクラを見るためこの山を訪れる人も多いと言います。
会津駒ヶ岳への登山コースは桧枝岐村の国道沿いから林道をしばらく登ったところにある滝沢登山口や、おなじ国道沿いのキリンテが利用されているようです。今日は滝沢登山口から山頂を往復することにしました。
桧枝岐村の国道沿いには駒ヶ岳登山口の標柱が建っています。ここからは渓流に沿った林道を緩やかに登っていきます。カーブには数台の車が停まることのできる駐車場が何ヶ所か。すでに数台の車が停まっている駐車スペースに車を停めリュックザックを肩に。ガイドブックなどでも紹介されている急な階段から登山道は始まります。
登山道は雑木林の中の急坂を登って行きます。最初からの急な登りになかなかペースも上がりません。振り返ると梢の先に田代山から帝釈山の稜線が見え隠れしますが、その頂は雲に覆われていました。
急な坂道も幾分緩やかになると標高1,495m。目の前のダケカンバの幹には鉈で刻まれた日付と人の名前。後で知って話ですが熊を射止めた印に刻んだものとか。かなり古いものもありますが、往時はクマが多かったのでしょうか。
道端で一息を入れた後、再び急な坂道をジグザグに登って行きます。右手にはなだらかな駒ヶ岳から中門岳への稜線が木の間隠れに見えています。やがてたどり着いた小さな広場は標高1,800mの水場。ここから山頂までは2.9km。ここが登山道の中間点のようです。
水場で小休止した後、幾分緩やかになった登山道を登っていきます。しばらく登ると登山道は明るい稜線を登って行くようになります。振り返ると下界は真っ白い雲海に包まれていました。ツマトリソウやイワカガミが目立ち始めた登山道に汗を流すと、右手には駒ヶ岳のなだらかな山頂。沢筋にはまだ小さくなった残雪が残っています。田代山の山頂から真っ白な会津駒ヶ岳を眺めたのは6月のはじめ。1月半で雪解けはかなり急速に進んでいるようです。
やがて稜線が近付いてくると木道が始まります。右手に駒ヶ岳の山頂を眺めながら木道を進んで行くと小さな池塘の脇にベンチが置かれていました。たくさんのパーティ駒ヶ岳の山頂を眺めながらが休息を楽しんでいました。
ここからは湿原の中に続く木道を登っていきます。湿原には白い花を付けるイワイチョウ。木々の緑を映す池塘も点在し、まさに山上の日本庭園と言ったところです。やがて山頂直下の駒ノ大池を目指して最後の登りに汗を流します。木道の両側にはチングルマに交じりハクサンコザクラが咲いています。その数は期待していたほど多くはないものの、ピンクの花はなかなか可憐なものです。やがて駒ノ小屋に向かって木道を登りつめると観光ポスターなどでもお馴染みの駒ノ大池です。
駒ノ大池からは小さな雪渓を越え、山頂へと続く木道を登って行きます。低いシラビソの林の中を登る急な階段に最後のひと汗を流すと小さな会津駒ヶ岳の山頂にたどり着きました。
灌木に覆われた小さな山頂にはすでに20人ほどのパーティが腰をおろしています。山頂の展望図には山頂から眺められる山々が描かれています。目の前には燧ヶ岳、田代山や日光の山々、晴れていれば富士山を眺めることが出来ると言う山頂も、低く垂れこめた雲にさえぎられ展望は期待すべくもありません。
山頂で昼食の後、中門岳を往復することにします。山頂から木道を下ると先ほど別れた巻き道。ここからは小さなアップダウンはあるものの、なだらかな稜線をたどる木道が続いています。白い雪渓を渡るところも何ヶ所か。コバイケイソウの芽ぶきが始まったばかりの所も多く、この稜線はようやく長い冬から目覚め始めたばかりのようです。登山道の脇に咲くイワイチョウやハクサンコザクラを眺めながらたどり着いた大きな池。傾きかけた標柱にはこの一帯を中門岳と言うと書いてありました。まだこの先にも小さなピークがあるようですが、とりあえずこのほどりで小休止としました。
池のほとりには駒ヶ岳の山頂で出会った中年のパーティが休んでいました。先生と言われる初老の男性がリーダーのようですが、残りは中年過ぎの女性ばかり。年をとると女性のほうが体力があるのかもしれません。
小休止した後、往路をたどり登山口へ。午後は曇り空と言う天気予報が当たってか、空は厚い雲に覆われ始めています。駒ノ小屋、水場で小休止した後、急な坂道を下っていきます。歩き始めてから6時間を超えると、急な下りは足が疲れるものです。滝沢の登山口にたどり着くころは足も痛くなり始めてきました。
急な登りに汗を流しながら登山道を登って行くと、ツマトリソウやイワカガミ、咲き残ったマイズルソウが白い花を付けていました。
9合目には小さな池塘が広がりイワイチョウやチングルマが咲き競うお花畑になっています。花の百名山にも紹介されているハクサンコザクラも彼方此方にピンクの花を付けていました。しかしその数はあまり多くないようです。
駒ヶ岳の山頂から中門岳への稜線にはハクサンコザクラが小さな群生を作っていました。所々に雪渓が残るなだらかな稜線は冬の眠りから目覚めたばかりのようで、コバイケイソウもまだ芽吹いたばかりのようです。