飯綱山は黒姫山、戸隠山、斑尾山、妙高山とともに北信五山の一つに数えられる山です。山頂に飯綱神社の奥社が祀られ、今も山岳宗教の色を濃く残すところで、登山道には不動明王をはじめとする十三体の石像が祀られています。また長野市民の山として親しまれ、家族連れのハイキングや近郊の小学生の登山遠足の山として、何時も賑わっている山です。
一ノ鳥居の駐車場に車を停め、明るい雑木林の中に続く登山道を緩やかに登り始めます。シラカバやミズナラなどの明るい若葉に覆われた心地良い登りです。しはらく登ると飯綱神社の大きな木の鳥居が建っていました。登山道の脇に立つ不動明王や釈迦如来の石像を数えながら緩やかな登山道を登って行きます。この登山道は今が新緑の季節。日増しに色を濃くしていく新緑に映えムラサキヤシオツツジが真っ赤な花を付けていました。
しばらく登ったところは駒つなぎ場と言われるところ。昔はここまで馬で登ってきたのでしょうか。ここから登山道は小尾根を巻きながら右手の小さな沢に向かって行きます。
小さな水場のある沢からは急な草付の坂道を登って行くことになります。短い鎖が張ってある小さな岩を越えると天狗ノ硯岩です。振り返ると木の間越しに北アルプスの山々が白い雪を被っていました。
やがて尾根道は明るい潅木に覆われた急な坂道を登って行くようになります。振り返ると真っ青に晴れ渡った青空の下、恐竜の背中を連想させるような岩の峰が続く戸隠山。その上には北アルプスの長い稜線が白い雪を被っていました。
小休止の後、急な坂道にあえぎながら山頂へ。飯綱神社の鳥居の脇から小さな祠の間を登ると広く開けた南峰にたどり着きました。
山頂には遮るもののない360度の大パノラマが広がっています。正面には沢筋に白い雪を残した戸隠山の岩峰群。その右手にそびえる三角形の山は高妻山。戸隠山の上にそびえる北アルプスの山々は白馬岳と杓子岳。これから続く長い稜線は、五龍岳、鹿島槍、爺ヶ岳、針ノ木岳、更には槍ヶ岳から穂高岳と続く峰々です。左手に目を移すと霞の中に溶け込むように四阿山や浅間山。その右手に連なる台形状の山並みは八ヶ岳連峰の天狗岳と蓼科山です。
飯綱山は南峰と北峰の二つの山頂を持つ双耳峰で、北峰の標高は南峰より8メートルほど高いとか。南峰から一度小さく下って登り返すと北峰の山頂です。飯綱山山頂の標柱が建つ山頂にはすでに数組のハイカーがお弁当を広げていました。5歳と言う小さな男の子を連れた親子連れ、年間60回も山に登っていると言う熟年の夫婦連れ、かなり足が達者な若い女の子などなど。平日にもかかわらず広い山頂もかなり賑やかなものです。
この山頂から展望は南峰にも増して素晴らしいものです。ゴツゴツとした岩峰が連なる戸隠山。その右手には谷筋に白い雪を貼り付けた高妻山と真っ黒な山肌を見せる黒姫山。その奥の火打山や妙高山はまだ冬の世界から目覚めていないようです。
山頂で昼食をしている最中に、登山遠足の子供たちが登ってきました。山頂でみんな揃っての記念写真やお弁当。さらに暫くするともう一校の子供たちが山頂に登って来ました。引率の先生に聞くと総勢150名とか。広かった山頂もたくさんの子供たちで何処かの行楽地状態です。我々は早々に登山口に戻ることにしました。
山頂からは南峰に戻り、急な坂道を登山口へと下り始めます。登山道の脇には鮮やかなムラサキヤシオツツジのほか、小さなピンクの花を付けたミネザクラ。オオカメノキも真白な花を付けていました。
天狗ノ硯岩で小休止した後、再び急な坂道を下って行きます。しばらく下ると登山道も緩やかになり、道端の石像を数えながら坂道を下ると車を停めた登山口です。
八ヶ岳の左の肩に白く雪を被った富士山が霞んでいました。この山頂から富士山までは直線距離で161キロメートル。条件がよければ直線距離で320キロメートル離れた和歌山県の大雲取山から富士山を眺めることができると言いますが、やはり160キロメートルの距離は遠いものです。
ちなみに新潟の富士山遠望点は越後駒ヶ岳の198キロメートル。長野の富士山遠望点は白馬大池の179キロメートルと言われています。
登山道には房のような花を付けたイワカガミが咲いていました。イワカガミの仲間には高山に咲くコイワカガミと比較的低い山に咲くイワカガミ、それとブナ林に咲くオオイワカガミがあると言います。コイワカガミとイワカガミの違いはあまり明確でないようで、どちらもイワカガミとして紹介している図鑑もあります。