斑尾山は野尻湖の湖畔に位置し、斑尾高原スキー場などを始めとするスキーの山として有名です。北信五山の一つに数えられているものの、標高は必ずしも高いとはいえない山です。ハイキングコースは幾つか開かれているようですが、インターネットで紹介されていた荒瀬原コースから山頂を往復しました。
登山口は豊田と野尻湖を結ぶ県道の途中から、林道斑尾線をしばらく入ったところにあります。林道の傍らに小さな標識があるだけで、気を付けなければ見落としそうなところです。
登山口からはミズナラやシラカバなどの雑木林の中を登る山道が始まります。ジグザグに登りを繰り返すと古海からの道を合わせた釜石山です。ここからは比較的緩やかな雑木林の尾根道を登って行きます。やがて道は蟻の塔渡りと言われる痩せた尾根を登って行くようになります。登山道の両脇にはピンクのムラサキヤシオツツジ、白い花を付けたタムシバも咲いていました。更に高度を上げていくと尾根道は低い潅木の道になります。曇り空のせいもあり視界は全く望めません。しばらく登ると露岩混じりの急な登りです。岩に間にはピンクのイワカガミが目を楽しませてくれました。
急な坂道をひと登りすると広く開けた大明神岳にたどり着きました。目の前には霞んだ野尻湖が広がっています。晴れていれば黒姫山や妙高山、火打山が眼に前に見えるようですが、今日は靄の中に霞んでその影さえも見せてくれません。
なだらかな尾根道をしばらく進む斑尾山の山頂です。一等三角点の山頂はブナなどの木立に覆われ視界は全く望めません。右手から登ってくる道は斑尾高原から登ってくる道。左手の道は斑尾高原スキー場へと続く道です。山頂に立つ杉の古木の下には十三薬師と言われる小さな祠が祭られていました。祠の脇の案内板に紹介されていた十三薬師のいわれに頷きながら大明神岳に戻ることにします。
大明神岳からは、車を停めた登山口へ。なだらかな稜線は滑りそうなところも少なく、1時間もかからぬうちに林道にたどり着くことがでました。
薬師様というものは十二体と決まっているのだがこんな話しがある。ある部落の衆が斑尾山に登った時、自分の家の屋敷神様にちょうどいいと薬師様を一体だけ持って帰ったところが、自分の家に置いたはいいが、それからというもの次々と災難に会い、驚いたその衆は「薬師様のタタリだ・・・」と考えもとのほこらに戻しに来た。しかし、なくなった一体の代わりに新しい薬師様が納められていたので十三体になってしまった。いくら並べてみても一体ははみ出してしまうので、そのままその日は山をおりた。しばらくして、山に登って来てみると、薬師様は行儀良く並んでピタッリと納まっていた。その後、幾人もの衆が山に登って同じ事をやってみた。ある時は印をして十三体全部を出して前の順序に並べてみたがやはり一体ははみ出してしまう。翌日山に登ってみると、きちんとほこらの中に納まって並んでいる。誰にも分からない不思議な薬師様である。
標高1,500メートルに満たない山であっても斑尾山は花の多い山です。タチツボスミレやチゴユリ、ヒトリシズカなどお馴染みの春の花が咲いていました。雪国ということもあって熊笹の藪の中には笹の子も生えているようです。道端に生えていた1本を採り、皮をむいて食べるとほのかな甘い味が口の中に広がりました。信州の山はこれから春本番を迎えるようです。