御在所岳は鈴鹿山脈のシンボル的な山です。最高峰は御池岳に譲るとしても、藤内壁と言われる切り立った岩壁やおばれ岩、地蔵岩などの奇岩怪石をめぐらせた山です。また山頂まではロープウェイが通じ、小さな子どもやお年寄りなども簡単にその山頂に立てることから、何時もたくさんのハイカーでにぎわっている山と言います。数年前、小海線の御座山に登ったことかありましたが、その時で出会った名古屋の人も、この山の良さを熱く語っていた記憶が残っています。まさに鈴鹿山脈の盟主ともいうべき山と言えるようです。
東名阪自動車道の御在所サービスエリア路越える頃になると、目の前に薄く霞んだ御在所岳の岩峰が見えるようになります。四日市インターからは一般道に降り御在所岳の登山口へと車を進めて行きます。御在所岳は人気の山と言うこともあって登山道は表道、中道、裏道のほか、鈴鹿スカイラインの武平峠から登って行く登山道など、たくさんのコースが開かれていると言います。今回は蒼滝橋の登山口から裏道をたどり山頂を目指すことにしました。
蒼滝橋の登山口からは渓谷に沿った雑木林の中をたどる遊歩道のような道が始まります。登山口で出会った小父さんに聞くと、裏道をたどると山頂までは2時間から2時間半程とか。平日にもかかわらずたくさんの人が山頂を目指しているようです。鉄製の橋がかかっている道をしばらく進むと中道への分岐点。中道はおばれ石など奇岩の中を登って行く急な登りで、途中にはキレットや鎖場もあると言います。枯れ葉に覆われた道はあまり登って行く人もいないようです。
ひっそりとした日向小屋を越えると、ほどなく藤内小屋です。小屋前のベンチからは藤内壁と言われる御在所岳の岩壁を見上げることが出来ます。小屋の前にはテスト岩と言う岩がありました。5mほどの岩にロープが垂れ下がっています。この岩を登れなければ藤内壁への挑戦は無理と言うことでしょう。六甲山や三ツ峠とともに、御在所岳が日本三大壁と言われる岩登りの練習グランドであることをうかがわせるところです。
藤内小屋からは国見峠に向かい本格的な山道が始まります。露岩の目立ち始めた道を登って行くと左手に天狗の庭と言われる岩の広場。藤内壁に命を落とした多くの若者の慰霊碑がありました。魔の山と恐れられた谷川岳には比べるべくもありませんが、この岩場もたくさんの若者の命を奪ったところのようです。ここからは露岩の多い山道が続いています。しばらく登った所が藤内壁の出会い。ここから左手の沢を超え、藤内壁へと取り付くところと言います。目の前にそびえる藤内壁はまさに天に向かってそびえる壁のように見る者を圧倒する迫力で迫っていました。
ここからは勾配も急になり、岩を踏み越えながらの登りが続いています。右手に国見岳へと続くガレた道を分け、急な坂道に息を切らせながら高度を上げていきます。左手に見上げる藤内壁の岩場にはアカヤシオがピンクの花明りのように咲いていました。天狗の庭の近くではミツバツツジが満開でしたが、稜線が近付くにつれアカヤシオの花が目立つようになります。
やがて傾斜も緩やかになると国見峠にたどり着きました。右手に登る道は国見岳へとの登る道。御在所岳の山頂は左手の道を登って行くことになります。時計は11時を過ぎたところですがもう山頂から下ってくる人もいました。
国見峠からは灌木の中の道を緩やかに登っていきます。しばらく登るとロープウェイの山頂駅がある山上公園。振り返ると奇岩がそそり立つ中道のピークが目の前に広がっています。目の前に車道が通る山上公園は完全な行楽地。ロープウェイで登ってきた家族連れやお年寄りが散策を楽しんでいます。御在所岳の山頂へは山上レストランの脇をたどりアカヤシオの花に彩られた遊歩道を登っていきます。
アカヤシオの咲く車道から右手の階段を登って行くと一等三角点の建つ御在所岳の山頂です。さらに稜線をしばらく進むと、晴れた日には琵琶湖も望めると言う望湖台です。
春霞に覆われあまり展望は利かないものの目の前には国見岳と釈迦ヶ岳、その奥には伊吹山もそびえているようですが霞に溶け込みその姿を見せてくれません。振り返ると正面に大きな雨乞岳、その左手には鎌ヶ岳の岩に覆われた急峻な岩峰がそびえていました。
展望台の岩に腰を下ろし昼食を楽しんだのち、御嶽神社に参拝していくことにします。御嶽山蔵王大権現を祭ったと言う拝殿の前にはがん封じという大きな銅鑼。叩くと大きな音があたりに響きわたります。
神社の下には長者池という小さな池がありました。この池にも小さな社があります。明治の頃、菰野に住む矢田甚太郎がこの池を見つけたと言います。池の主である大蛇に不思議な霊気を授かり、病にかかった者が彼の手でなでられると全ての病気が治ったとか。石祠の脇にもがん封じという銅鑼がありました。
山上公園の芝生で一休み。付近は登山遠足で登ってきた小学生の歓声にあふれていました。最近の登山遠足はロープウェイを利用しているようです。
晴れていれば富士山も見えると言う富士見岩展望台で、目の前に広がる奇岩、怪石群をファインダーに収めた後、裏道を下って行くことにします。息を切らせながら登って来た道も下りとなると気楽なもの。途中、藤内壁出会い、藤内小屋で小休止をした後、車を停めた駐車場へ。山頂でかなり時間を潰したこともあり、たどり着いた駐車場にはあまり車も残っていませんでした。
「春満開の御在所岳へ」とガイドブックにも紹介されていましたが、御在所岳は今が一番艶やかな季節です。5合目付近はミツバツツジやシロヤシオが咲いていましたが、藤内壁や国見峠の周辺はアカヤシオの花に彩られています。
登山道に目を落とすと真っ赤なイワカガミ、タチツボスミレなどに交じって咲いている白いスミレはフモトスミレでしょうか。5合目付近では花の時期を過ぎていたショウジョウバカマも、国見峠付近では咲き始めたばかりのピンクの花を見付けることが出来ました。
山頂周辺の道端にはリンドウの薄紫の花が咲いていました。ここに咲くリンドウはタテヤマリンドウとか。ガイドブックではハルリンドウとして紹介しているものもあります。タテヤマリンドウはハルリンドウの高山型で高層湿原に咲くと言いますが、ここのリンドウは道端に無造作に咲いていました。花の色も濃い水色から白色まで、色々な変化があるようです。