八幡平をハチマンタイラではなくハチマンタイと呼ぶのは、八甲田山などに多い岱と同義語なのか。山上の湿地帯をあらわす古語、田井から呼ばれるようになったと言われています。いずれ山頂にたくさんの湿原や池糖を持つ高層湿原にふさわしい名前です。この山には以前にも訪れたことがあります。しかしあいにく一寸先も見えないひどい霧の中で、見返り坂の駐車場までは登ってきたものの、車も降りず先を急いだ記憶があります。
今年もまた本州の山を歩いてみようと言うことでフェリーを利用し青森へ。青森から一般道をたどりトコロ温泉へ向かいます。ここからアスピーデラインに乗り換え八幡平を目指しました。しかし天気は今一つ。どうもこの山は天気に見放されている山のようです。
アスピーデラインは急なカーブを繰り返しながら徐々に高度を上げて行きます。やがて右手にビジターセンターの大きな駐車場が見えてくるようになると、徐々に雲行きが怪しくなってきました。木々も背の高さが低いオオシラビソが目立つようになってくると大深沢の展望台。目の前に広がる山々は低く雲が棚引いています。
展望台からさらに道を登って行くと、目の前にウサギが飛び出してきました。観光地化された八幡平といいながら、まだ自然は残っているようです。
たどり着いた見返り坂の駐車場は土産物屋やレストハウスの建つところです。さほど強くないものの、霧に混じって細かな雨が降っています。とりあえず登山靴と雨具に身を固め、八幡沼をひとめぐりしてみることにしました。
登山道というよりは遊歩道といったほうが良いような道は、ほどなく小尾根の上に出ました。この展望台に立つと、晴れた日には岩手山や遠く早池峰の山々が望めると言います。しかし今は目の前を走るアスピーデラインすらその姿を見せてくれません。ここで道は二手に分かれます。ガマ池へと向かう道を左に分けると、道は木道の中を八幡沼の湿原へと緩やかに下って行きます。広く開けた湿原には、秋の湿原を彩る花々が今を盛りに咲き乱れていました。ウメバチソウやタチギボウシ、エゾオヤマノリンドウも紫色の花を付けています。もう花の時期は終わってしまいましたが、夏にはイワイチョウやミズガシワの花が湿原を染めているところとか。
霧に霞んだ八幡沼の湖畔を半周すると小広い湿原に出ました。左手には緩やかな八幡平の山頂が霧雨に霞んでいます。緩やかに木道を登って行くと火口湖の一つであるガマ池。湖面にはミズガシワが小さな群落を作っていました。
ここからコンクリートに固められた遊歩道のような道になります。緩やかに道を登って行くと八幡平の山頂。シラビソの林の中に囲まれた山頂には展望台が建っていました。晴れた日には大きな展望が楽しめるというこの山頂も、今は白い霧に煙っているだけです。
山頂からは緩やかに遊歩道を下って行くことにします。左手にはメガネ沼などの火口湖が青い水をたたえています。人気の少なかった八幡沼周辺に比べ、この付近は観光客が多いようです。小雨に煙る遊歩道をたくさんの観光客が登ってきました。
たどり着いた駐車場の側に建つ土産物屋に立ち寄り、登山の記念にバッチなどを買って行くことにします。観光地の名物に美味いものはないと言いますが、食堂の中で売っていた味噌味のキリタンポは、まずまずの美味でした。