奥久慈の中心、大子町の南西には鋭い岩峰で知られる男体山があります。標高は654メートル、西面と南面を絶壁に囲まれ、古くから山岳信仰の対象として修験者を集めてきた山です。山麓の集落の名である大円地が、大円鏡智(修行の後で会得する万物を照らし出す鏡のような知恵)に拠っているように、付近一帯は修験道の名残を今も留めているところと言いいます。
常磐自動車道の常陸太田インターからは一般道に降り、久慈川の流れを右手に眺めながら北へ。やがて右手の山肌が近づいてくると湯沢温泉への入り口です。ここから道を右に折れ、ひなびた集落の中を進んで行くと古分屋敷の集落にたどり着きます。正面には真っ青に晴れ渡った青空の下に、男体山の岩峰がその姿を見せてくれます。
小さな駐車場に車を停め、大円地の集落を進むと登山口です。ここからは暗い杉の植林帯の中をジグザグに登る急な登山道が始まります。左手に健脚コースの道を分け、大円地越えを目指し急な坂道を登って行きます。目の前の視界が開けてくると大円地越。赤い屋根をした東屋が建っていました。
ここからは明るい雑木林の中を山頂に向かって登り始めます。しばらくすると登山道は稜線をたどる急坂になりました。左手はまっすぐに切れ落ち、木々が無ければかなりのスリルを感じるところです。
露岩に覆われた明るい稜線をひと登りすると、小さく開けた男体山の山頂です。650メートルほどの低い山ですが、木々の間から茨城の山を一望することが出来ます。茨城の地理には不案内のため、なかなか山を同定することはままならないものの、それでも北に見える頂は八溝山、東に低く連なる山並みの中、山頂にアンテナを戴いたのは日立の高鈴山でしょうか。展望を楽しみながらお握りの昼食としました。話し掛けてきたのは60才を少し過ぎた初老の夫婦連れ。聞けば宇都宮の人と言いいます。夫婦そろってあちこちの山を訪ねているようです。
山頂での展望を楽しんだ後、登山口へ戻ることとします。途中の大円地越えの東屋では数人のパーティが昼食を楽しんでいました。
駐車場に戻った後、近くにある森林温泉で汗を流して行くこととします。ガイドブックには大子町から少し山に入った所とありましたが、なかなか判りにくい所にある温泉です。それでも横浜や千葉、足立ナンバーの車が駐車していました。やはり今は日帰り温泉が静かな流行のようです。