馬返し登山口-(1h05m)-1合目-(0h45m)-3合目-(1h05m)-5合目-(0h55m)-7合目-(0h10m)-8合目避難小屋-(0h20m)-不動平避難小屋-(0h15m)-8合目避難小屋-(1h25m)-新道4合目-(1h20m)-馬返し駐車場
岩手山は日本百名山の一つに名前を連ねる東北の山です。コニーデ型の成層火山で有史以来たびたび噴火を繰り返た活火山で、大正8年(1919年)には大地獄谷で水蒸気爆発が発生したと伝えられています。火山活動が活発したことから一時入山が禁止されていましたが平成13年7月には規制が解除されています。
古くからの信仰の山で江戸時代には「おやまがけ」と呼ばれ、白装束に金剛杖をもち六根清浄を唱えながら参拝登山が行われていたと言います。登山道もいくつか開かれ、東の柳沢(馬返し)コース、南の御神坂コース、北の上坊コースは参拝登山のコースとして使用されていました。焼走りコースは300年前の噴火で流出した溶岩流をたどるコースで、途中には噴火口跡も見ることができると言います。
登山口である馬返しの広い駐車場にたどり着いたのは8時前。大きな駐車場には梅雨を目の前にした時期にもかかわらず、数台の車が停まっていました。この駐車場で一夜を過ごし、早朝から山頂を目指している人も多いようです。
勢いよく水を噴き出す鬼又清水の先に登山口があります。ここから小さな沢に下ると雑木林の中をたどる登山道が始まります。若葉色に包まれた雑木林の中の広い道は緩やかに高度を上げて行きます。
たどり着いた0.5合目の道標。ここで新道を右に分け、木の階段が整備された旧道を登って行きます。しばらく登ると梢の先からはこれから登る外輪山の肩を見上げることができます。まだ斜面の一部には雪も残っているようです。
道端に咲くヤマオダマキやオオバキスミレなどの花を眺めながら荒れた道を登って行くとようやく1合目です。ここからも新道への道が分かれています。豆腐岩を越えると視界が開け、振り返る濁った空の下には姫神山がなだらかな裾野を広げています。
この付近からは火山礫まじりの滑りやすい斜面が始まります。イワカガミなどのほかムシトリスミレが紫色の花を付けている岩まじりの急な登りに息を切らせながらたどり着いたところは4合目です。
ゴロゴロと歩きにくい岩交じりの道はまた花に彩られたところで、道端に目を落とすとエゾツツジが赤い蕾を膨らませていました。大雪山や知床では見ることの多い小さなツツジですが、本州では見かけたことがなかったようです。
たどり着いたところは5合目も新道への連絡道があるところです。ここにはヒヨドリ清水があります。高度を上げるにつれ稜線は巻上がるガスに包まれ始めて来ました。気温も幾分低くなっているようです。
登山道はダケカンバなどの灌木の林の中を登るようになります。林の中にはピンクのシラネアオイが群生しています。
再び火砂礫の斜面を登り始める登山道は御蔵石です。ここは6合目、傾斜を緩めた登山道はミヤマハンノキなどの灌木の林の中を緩やかに登って行きます。左手の沢にはまだ残雪も残っていました。
小さな石祠が祀れたところは7合目です。目の前には岩手山の山頂が雲の中にそびえています。石祠には石の獅子頭が祀られています。大きな鼻が目立つ獅子頭を岩手では権現様と呼び、厄病よけのご利益があるとされているようです。ここに祀られた獅子頭もそのような信仰を今に伝えるもののようです。
小さな沢に沿って登る登山道は程なく8合目避難小屋にたどり着きました。大きな避難小屋は夏には管理人が常駐しているようですが今はひっそりとして鍵もかかっているようです。目の前には御成清水が勢い良く水を流していました。
避難小屋前のベンチに腰を下ろし昼食にしました。時計はすでに1時を過ぎています。そろそろ山頂から下ってくる人も多いようです。標高差のある岩手山に登るためにはもう少し早く登山口を出発した方が良さそうです。今日は山頂からんの展望を期待できそうもないこともあり、不動平まで足を延ばした後登山口に戻ることにしました。
浅い沢沿の中を登って行く登山道は緩やかに不動平を目指します。この沢は最近まで雪に覆われていたようで、雪解け直後に咲くショウジョウバカマの花も見付けることができます。
たどり着いた不動平は網張りコースや御神坂コースからの道を合わせるところで、見上げる大きな岩の下には石灯篭や石仏が祀られていました。分岐の先には最近改築されたと言う不動平の避難小屋があります。小奇麗な避難小屋の奥には今夜宿泊するのか、寝袋とコッヘルが置いてありました。
ここからは往路をたどり馬返しの登山口に戻ることにします。明日以降、本格的な梅雨の季節が始まると言う天気予報のとおり、雲もますます厚くなってくるようです。7合目から岩まじりの急な坂を下って行きます。この付近から新道に分かれる道があるようですが、灌木林の中を下り新道の方が楽なようです。
4合目からは新道への連絡路へ。ここからは新道を下って行きました。浅い沢の中を下って行く道は荒れているものの、ジグザグを繰り返しながら下って行く道は旧道より歩きやすい道です。
長い下りに飽き始めるころ0.5合目の道標にたどり着きました。ここからは広い林の中を下って行くくと馬返しの駐車場です。朝はたくさん停まっていた車もすでに数台だけ、やはり岩手山に登るのはもう少し早くなければならないようです。この次この山に登るときは、もう少し早い時間から山頂を目指すことにしましょう。
この時期の岩手山は花の多い山です。6合目から7合目にかけての灌木林の中にはシラネアオイが群生していました。北海道では身近な山にも咲き競っているシラネアオイですが、尾瀬や日光では鹿の食害などにより最近は見付けることも難しくなってきました。しかし岩手山の斜面にはピンク色の群生が広がっていました。
5合目付近の砂礫の斜面も高山植物の多いところで、イワカガミに交じってミヤマアズマギクやエゾツツジなども見付けることができました。この時期の東北の山は花衣を纏った山として我々の目を楽しませてくれるようです。