姫神というロマンチックな名前が付けられたこの山には色々な伝説が残っているようです。北上川を天の川にたとえると彦星が岩手山で織姫が姫神山。しかし、山の世界にも三角関係があるようで、岩手山をめぐり姫神山と早池峰山は因縁の仲になってしまったとか。それ以来、岩手山と姫神山が晴れると早池峰山は曇り、早池峰山と姫神山が晴れると岩手山は曇ると言います。秋田駒ヶ岳の男女岳、女岳、男岳にも三角関係の言い伝えが残っていますが東北の山の世界は複雑な伝説が多いようです。
また 姫神山は安倍貞任の時代から金を採掘した山。平泉藤原三代には大々的に採掘されていたと伝えられています。採掘跡は北姫金山、姫神金山、岩玉金山、八枚金山…。明治に入ってからも細々と金の採掘が行われていたと言います。
登山口で登山届を出した後、駐車場の傍から芝生の中の登山道を登り始めます。ほどなく登山道は暗い杉の林の中を登るようになります。
しばらく登ったところにそびえる大きな杉が一般杉。杉の根元からは小さな清水が湧いていました。ここからは急な階段が続くザンゲ坂です。このような名前が残っていることは、この山も山岳信仰の名残が残っている山のようです。急な階段に息を切らせると五合目の広場です。道端に腰をおろして小休止としました。
五合目からは木の根が張り出した急な登りに汗を流します。昨夜は雨が降ったのか、登山道はかなり水気を含んでいます。風の通りも悪くまさに蒸し風呂状態です。おもわず山頂まで400mほどの道端に腰をおろして小休止です。
小休止の後、再び展望のきかない道を山頂へ。露岩が目立つ山頂直下には薬師神社という壊れかけて石祠が建っていました。ここから登山道は二手に分かれます。右手は岩場の道、左手は幾分なだらかな道です。
たどり着いた山頂は露岩が目立つ開けた山頂で、一等三角点と姫神山山頂と書かれた標柱が建っていました。広く開けた山頂からは頭を雲に隠した岩手山。ここから眺める岩手山は岩手富士の名前そのままに、富士山のような均整のとれた姿をしています。その左手には雲の中に見え隠れする秋田駒ヶ岳。さらに南に目を移すと夏雲の下に早池峰山が見え隠れしているようですが良く判りませんでした。
山頂で早い昼食をしたのち帰路はコワ坂へ。道端に咲く花々をカメラに収めながら急な坂道を下っていきます。しばらくすると傾斜も緩やかになりコワ坂の登山口にたどり着きました。ここからはアスファルトの舗装された道をおよそ30分ほど。道端にはヒメジオンやオオマツヨイグサなど、秋の花である萩もそろそろピンクの花を付け始めていました。
新花の百名山にガンコウランの咲く山と紹介された姫神山は低いながらも花の多い山です。すでにこの時期、夏の花も終わりを向かいようとしていますが、登山道には色々な花を見付けることが出来ます。
ザンゲ坂を登ると暗い林の中にもかかわらず、ヤマジノホトトギスやクガイソウ、ウツボグサなどが咲いていました。道端に咲いていた大きな花はジャコウソウとか。葉や茎を揺すると麝香に似た匂いがすることと言いますが果たして。
広く開けた山頂一帯はお花畑になっています。この時期目立つ花はヤマハハコとミネウスユキソウ、オオバギボウシも大きな花を付けていました。この稜線に咲くアザミは何でしょうか。茎葉が全縁なのところはガンジュアザミに似ているようですが花は上を向いています。ガンジュガザミは岩手山の特産種。素人にとってアザミは識別が難しい花の一つです。