今年は早いもので6月に入るとすぐに梅雨入りが発表され連日ぐずついた天気が続いています。かねてから気になっていた川苔山に大丹波林道からの登山道があると言うことで訪れることにしました。川苔山は奥多摩でも人気の山で、花の百名山にもアズマイチゲの咲く山として紹介されています。日原の川乗橋からのコースが一般的ですが大丹波側からは長い林道歩きが必要なためか訪れる人も少ないコースと言います。
川井の集落の中を登って行く県道はやがてダートな林道大丹波線と名前を変え、新緑の大丹波川に沿って高度を上げて行きます。登山口の標柱が建つ駐車場からさらに林道を登って行くと小さな駐車スペースがありました。道端には川苔山の登山口を示す道標もあります。この道端に車を停め山頂を目指すことにしました。
登山道は杉林の中のふみ跡を大丹波川へと下って行きます。滑りやすい木橋で大丹波川を渡ったのち、雑木林の中の緩やかな登山道を登って行きます。標高が低い奥多摩ではすでにツツジの季節を過ぎ、道端にはヤマクワガタが白い小さな花を付けていました。
水量の少なくなった沢を渡ると送電線の下にたどり着きました。杉の林の中に小さな紫色の群落を作っているのはヒイラギソウ。絶滅危惧種に数えられる花と言いますがここ大丹波川では道端に無造作に咲いています。
登山道の途中には沢水を引き入れたワサビ田もあります。今年新たに植え付けたのか細い株が整然と植えられたワサビ田もありました。登山道は雑木林の中を緩やかに登って行きます。たどり着いた広い平坦地は獅子口小屋の跡とか。以前はかなり大きな小屋が建っていたのでしょうが、今はコンクリートの礎石が草原の中に残っているだけです。この山域で残っている山小屋は大岳山や雲取山など、日帰りが中心の奥多摩で山小屋を運営するのは難しいのが現状のようです。
右手に分かれる道は踊り平へと登って行く道です。ここで道を左に、小さなワサビ田の脇からは急な木の階段が始まります。真っ直ぐに登って行く急な階段は雑木林の中を横ヶ谷平へと登って行きます。急な登りも一段落するとやがて日向沢ノ峰から川苔山へつ続く稜線上の分岐点、横ヶ谷平にたどり着きました。広い防火帯の上には心地良い散策路のような登山道が続いていました。
横ヶ谷平で一休みしたのち、川苔山に向かい明るい登山道を緩やかに登って行きます。赤九奈山から川井に下って行く道を左に分けると、登山道は急な坂道を登って行きます。息を切らせながらたどり着いた頂が曲ヶ谷北峰です。明るい稜線にはミツバツツジが咲き残っていました。目の前には小高い川苔山の頂がそびていえいました。
小さく下った鞍部には崩れかけた川苔小屋が建っています。川乗橋から登って来る登山道を合わせると、ハイカーの数が多くなってきます。小さな子供を連れた家族ずれのほか、会社の仲間でしょうか若いグループも多く登っています。最後の急な登りに息を弾ませると広く開けた川苔山の山頂にたどり着きました。目の前は大きく開けていますが曇り空の中に大岳山や御前山が薄く霞んでいるだけです。冬の晴れた日には富士山もその姿を見せると言う山頂も、梅雨の合間では展望を期待することが無理のようです。
昼食ののち、往路をたどり獅子口小屋跡へ戻ることにします。さらに雑木林の中を緩やかに下って行くと送電線下にたどり着きました。杉林の中に建つ小さな指導標から道を左に。登りでは大丹波川に沿って登って来ましたが、帰路はこの指導標から林道を経て登山口に戻ることにしました。杉林の中のふみ跡のような道をしばらく進むと大丹波川林道です。小さな滝の落ちる広場は林道の終点。数台の車が停まれる駐車スペースもあります。しかし登山口には東電の標柱があるのみで、登山口を示す標識はありませんでした。
ここからはダートな林道大丹波線を緩やかに下って行きます。しばらく下ると車を停めた駐車スペースにたどり着きました
すでに奥多摩はツツジの時期を過ぎていました。山頂付近にはミツバツツジがわずかに残っているものの、他には山頂にサラサドウダンが咲き始めているだけでした。
登山道には白いクワガタソウやクルマバソウ、黄色いヒメレンゲか目立つものの、他にはあまり多くの花を見つけることはできません。それでも、送電線下の近くに咲いたヒイラギソウは初めて見る花です。絶滅危惧種という珍しい花が奥多摩に咲いているとは、奥多摩にもまだまだ自然が残されていると言うことかもしれません。