小樽に住んでいた頃、石狩湾越しに長く連なる増毛の山々を眺めていた記憶が残っています。暑寒別岳をはじめとして雄冬岳、浜益岳、群別岳など1,400メートル前後の山々が連なり増毛山地を構成しています。しかし登山の対象になるのは最高峰である暑寒別岳のみ。数年前訪れた雨竜沼湿原の木道の上から眺めた南暑寒別岳と、その後ろにそびえる暑寒別岳が印象的でしたが、雨竜沼コースからは往復10時間を越える山行になると言います。今回利用する箸別コースは、日本海を背にして、長い尾根を登って行くコースですが、比較的簡単に山頂を踏むことができると言います。
オロロンラインと言われる国道231号線を北へ。箸別から道を右に曲がり登山口を探しましたがなかなか見つかりません。林道工事が行われているようで、朱紋別から迂回路をたどるようになっていました。朱文別から10kmほど、ようやくたどり着いた箸別の登山口にはすでに数台の車が停まっていました。
登山道は明るい雑木林の中を、緩やかに登り始めます。しばらく歩くと視界が開け、正面に大きな暑寒別岳がその姿を見せてくれます。しかし1,000メートル付近から上は雲に隠れ、その全貌を見せてくれません。だらだらとした登りを続けていくと、登山道はダケカンバの雑木林の中を尾根に向かって登って行きます。単調な登りに飽きはじめる頃、五合目にたどり着きました。
五合目で小休止の後、再びなだらかな登山道を登って行きます。六合目を越えしばらく登るとダケカンバの雑木林から明るい笹の斜面を登る登山道になります。正面に小高い頂が見えてくると七合目。あたり一帯は今を盛りに咲き乱れるお花畑となっています。
七合目からは小高い稜線を目指す急な登りになります。登りつめた稜線は八合目。付近一帯は背の低いハイマツに覆われています。晴れた日には左手に雨竜湿原、右手には暑寒コースの尾根が望めると言いますが、今日はガスの中に隠れその姿を見せてくれません。八合目の標識の傍で再び小休止とします。
小休止の後、再び小高い稜線に向かい急な坂道を登って行きます。たどり着いた稜線は頂上台地の一角。先ほどまで立ち込めていたガスが切れ、目の前にこんもりとした山頂がその姿を見せてくれました。右手から暑寒コースを合わせた登山道は、砂礫地の中を緩やかに登って行きます。
たどり着いた山頂は三角点の立つ小さな頂で、すでに10人ほどのハイカーがお弁当を広げていました。日本海側の展望はないものの、正面には雲を巻き上げている南暑寒別岳。右手には群別岳の頂を望むことができます。晴れていれば南暑寒別岳の先に雨竜湿原を望むことができるようですが、今日は雲に包まれその姿を見せてくれません。
山頂で昼食の後、もう少し雲が晴れてくれるかと思いながらでしばらく時を過ごしたました。しかしなかなか雲は上がってくれません。仕方なく、箸別の登山口を目指し下り始めることにします。
箸別の登山口へはおよそ2時間半。だらだらと続く登山道も、花々を愛でながらの心地良い下りです。しかし夥しい藪蚊もこの山の特長なのか。おかげで手も足も薮蚊に刺されてしまいました。
この山はたくさんの花に恵まれた山です。登りはじめてすぐの道端には、サンカヨウが青い実を付けています。カタクリも目立たない菱形の実を付けていました。
七合目の明るい草原はお花畑になっています。シナノキンバイとチシマフウロウに彩られた斜面は、今が夏の真っ盛りです。花の種類もかなり多いようで、タカネナデシコやハクサンチドリ、エゾシオガマ、エゾホソバトリカブトなど。黄色い大きな花はトウゲブキとか。
八合目もたくさんの花に彩られた稜線です。オヤマノエンドウに似た赤紫の花は暑寒別岳の特産種であるマシケゲンゲです。花の数は多くないようでファインダーに納め損ねてしまいました。
山頂周辺もお花畑になっています。白い花を付けたエゾシオガマが群生していました。ハイマツの陰には小さなリンネソウも咲いていました。