スキーや樹氷で有名な蔵王は、鳥海山や岩手山のような独立峰と異なり、一脈の山々が長々と連なる山です。取り分けて目を引く高峰がない山であっても、この山が登山の対象として親しまれている理由に一つは、お釜と称する火口湖の存在でしょう。直径360メートル。ほぼ円形の湖水は、噴火湖特有のコバルトブルーの水をたたえ、鉄錆色の火口壁のを湖面に映す、怪しげな景色を見せてくれます。
東北自動車道、山形自動車道を乗り継ぎ山形蔵王インターへ。東京からはおよそ380kmの道程です。ここからは有料道路である西蔵王高原ラインを緩やかに登って行きます。ホテルやペンションなどが点在する一帯は、冬はスキーのメッカとして賑わう所です。左手になだらかな熊野岳を見ながら山頂へと続く蔵王ライン登って行くと、苅田岳直下の駐車場にたどり着きました。
大きな駐車場に車を停め、ひとまず苅田岳の山頂を目指すことにします。山頂まではわずかの登り。ハイヒールやスニーカーの観光客も付近を散策しています。左手には蔵王のシンボルともいうお釜がコバルトブルーの水をたたえています。この山はまだ冬の眠りから覚めたばかりなのでしょうか、白く広がる残雪が赤錆色の火口壁を際立たせています。小さな山頂には苅田峰神社の立派な社殿が祭られていました。
苅田岳の山頂から馬ノ背と呼ばれる稜線をたどり、熊野岳へと足を延ばすことにします。右手にお釜を眺めながら、緩やかに尾根道を登って行きます。苅田岳の山頂からは指呼の間に見えていた熊野岳も、歩いてみるとなかなか遠いもの。やがて額に汗が浮かび始めるころ、小さなケルンの建つ熊野岳の山頂にたどり着きました。さらになだらかな山頂を進むと、石垣を四方に廻らせた熊野神社の社殿が建っていました。登山道はここから地蔵岳、三宝荒神山へと続いているようですが、我々は苅田岳に戻ることとします。
熊ノ岳からは往路をたどり苅田岳の駐車場へ。付近まで足を延ばす観光客は少ないようで、のんびりとした山行を楽しむことができました。