深田久弥の日本百名山に名前を連ねた両神山は急峻な岩峰を四方にめぐらせた岩山です。恐竜の背を見るようなゴツゴツとした稜線を連ねる特徴のある姿は、遠くの山からもひと目でそれとわかる山です。一般的な登山口は清滝小屋から登るコースと白井差口から登るコース。このほか八丁峠から岩尾根をたどるコースもあるようですがこちらは岩場が連続する上級者コースです。一昨年の秋、清滝小屋から山頂を目指したことがありましたが、その時は舞い上がる霧に包まれ、展望には恵まれなかった記憶がります。今日は比較的楽に山頂を目指すことのできる白井差口から、紅葉を愛でる一日を過ごしてみることにしました。
関越自動車道の花園インターから両神村へ。たどり着いた両神村からは、車の対向もままならない狭い道を白井差へと登って行きます。急なカーブを幾度か繰り返しながら高度を上げて行くと登山口である白井差小屋にたどり着きました。狭い道の両側にはすでにたくさんの車が停めてありました。
白井差小屋からは紅葉が始まりかけた林道を緩やかに登りはじめます。小さな堰堤を越えると本格的な登山道が始まりました。やがて右手に落差20メートルほどの昇竜ノ滝が現われます。付近一帯は黄色いブナやミズナラ、真っ赤なカエデの紅葉に包まれ、まさに山が燃えているようです。次第に急になってくる急坂にあえぎながら高度を上げて行くと、清滝小屋からの道を合わせる一位ガタワの按部にたどり着きました。
ここからはクサリや木の根を頼りに急登する露岩帯です。露岩帯を真っ赤に彩るドウタンツツジは今が紅葉の盛り。やがて勾配が緩やかになると、暗い杉林の中に両神神社の社殿が祭られていました。ここからなだらかな稜線を進むと小さな東屋が建っています。正面にはこれから目指す両神山の岩嶺が手に取るように眺められました。
一度按部に下り、梵天尾根からの道を合わせると小さな両神山の山頂にたどり着きました。山頂には両神神社奥ノ院の小さな小祠が祭られています。ここからは広い展望を得ることができます。晴れ渡った秋空の下、甲武信ヶ岳から重々と連なる奥秩父の山々。振り返ると雲取山を始めとする奥多摩の山々。なかなか素晴らしい展望です。山頂で展望を楽しんだ後、岩尾根の上に腰を下ろし、遅い昼食としました。
昼食の後、帰りの時間を気にしながら白井差口に戻ることにします。両神神社の社殿の近くにはのぞき岩といわれる展望台があるとい言います。しかし帰りの時間が気掛かりで立ち寄ることもできません。クサリを頼りに急な露岩帯を下って行くと一位ガタワの按部にたどり着きました。
一位ガタワで小休止の後、迫り来る秋の夕闇に急かされながら白井差口へと急坂を下って行きます。昇竜ノ滝をこえるころには辺りを夕闇が包みはじめ、持ってきたヘッドランプが久しぶりに役に立ってしまいました。