奥秩父の山並みの中でひときわ目を引く鋸歯状の稜線をした両神山。深田久弥氏の日本百名山の一つにも選ばれ、また古くから信仰の山として親しまれていた山です。登山道は日向大谷から清滝小屋を経て山頂を目指すコース、白井差口から山頂を目指すコースなどが整備されています。何れも公共の交通機関の便は不便な山です。今日はよく登られていると言う日向大谷から山頂を目指すことにします。
関越自動車道の花園インターから小鹿野へ。小鹿野からは対向車とのすれ違いもままならない狭い山道を、登山口のある日向大谷へと登って行きます。たどり着いた日向大谷の登山口には二軒の民宿が建っていました。
民宿の脇に付けられた階段が登山道の入口です。登山道は山腹を巻くように暗い杉林の中を登り始めます。信仰の山の面影を残す登山道には古い石仏、石碑が立っていました。しばらく単調な道をたどると会所と言われる分岐点。右手の道は七滝沢コースの道と言います。我々は左手の道を沢筋へと下りて行きます。
ここから登山道は沢沿いの道となり、飛び石を頼りに幾度か沢を渡ります。右手の尾根は産泰尾根と言われる尾根で巨岩が空に向い突き上げています。急な登りにあえぎながら沢を詰めて行くと、登山道は沢筋を離れ右手の山腹へと登って行くようになります。大きな岩の立っているところが八海山。山頂からは中年の男性が下ってきました。話によると「昨日、白井差口から登りはじめ途中の山小屋で一泊したと言います。時間的には余りにも余裕がありすぎ中途半端の山・・・」と嘆いていました。
八海山からは急な山腹をジグザグに登って行きます。しばらく登ると小さな弘法ノ井戸の水場。さらに急な登りに息を切らせると赤い屋根の清滝小屋にたどり着きました。この小屋は数年前に火災で消失したようで、真新しい山小屋は昨年から営業を開始したとか。この時期、小屋ではすでに薪ストーブを炊いていました。子供会の登山という親子連れが仲間を待ちながら休んでいます。我々もここでお茶を御馳走になりながら小休止としました。
清滝小屋からは一位ガタワへと登って行きます。登山道は次第に露岩が多くなりジグザグに高度を上げて行きます。やがて左手より白井差からの道を合わせると、小さな峠状の一位ガタワにたどり着きまました。
ここからは岩尾根状の登りになり、小さなクサリ場も現れます。付近はすでに紅葉が始まり、赤や黄色に色付いたカエデやブナが目を楽しませてくれます。高度を上げるに従い、あたりはガスに包まれ展望は全く利きません。クサリ場を越えると鏡平。ノゾキ岩への道を左に分け、しばらく登ったところが暗い林の中に建つ両神山の奥宮です。
ここからはなだらかな稜線上の道をたどることになります。しばらく進むと立派な東屋が建っていました。一度鞍部に下り、露岩に覆われた急坂を登り返すと小さな祠が建つ両神山の山頂です。残念ながらあたりは巻き上がるガスに包まれ展望は期待すべくもありません。狭い山頂を後に、稜線上をしばらく戻るとベンチ置いてある展望台です。ここで遅い昼食としました。
昼食の後、往路を日向大谷まで戻ることにします。急な露岩の続くクサリ場を慎重に下っていくと一位ガタワ。ここから山腹を巻くように下っていくと清滝小屋にたどり着きました。紺の作務衣を着た小屋番が一人。「ここから日向大谷までゆっくり歩いても2時間ほど。今日は宿泊をする人もいない・・」と言っていました。
ここからは車を停めた日向大谷まで下ることにします。長い下りにあき始める頃、ようやく今朝登ってきた日向大谷の民宿の屋根が見え始めてきました。