四阿屋山は両神山の東に派生する支尾根の末端に位置する小さな山で、両神山など奥秩父の山の好展望台として知られています。また2月には福寿草、3月には節分草、4月にはアカヤシオなど四季折々の花にも恵まれ、家族連れのハイカーなどでにぎわう山です。江戸時代の伝説では、天狗の住む魔の山として里人から恐れられていた山とか。山上には四阿屋が建てられ、親や子供が死ぬと遺族はこの四阿屋に篭り、亡くなった者の霊を招くなどの行事をしたと言います。
池袋駅から快速急行で三峰口駅へ。週末とあって電車はカラフルなトレッキングシューズにデイザックといったハイカーで込み合っていました。たどり着いた三峰口駅からは30分ほどの待ち合わせで両神村営の路線バスが出ると言います。一緒の電車で着いた50人ほどの熟年者のパーティも、我々と同じ四阿屋山に向かうようです。
たどり着いたバス停には、古い歴史を刻んだ薬師堂と両神神社の社が建っています。明るい舗装道路をしばらく登ると鳥居山コースへの分岐点です。ここから道を右手に取り遊歩道となっている階段を登ると花見山といわれる台地。立派な東屋が建っていました。
ここからは明るい雑木林の尾根道をたどるようになります。明るい春の光を浴びながら、厚く落ち葉の降り積もった尾根道を、カサカサと心地よい音を立てながら登って行きます。そろそろ芽を吹き始めたツツジや青々とした葉の馬酔木。そろそろ春はこの山にもやって来ているようです。
緩やかな樹林帯をしばらく登ると送電線の大鉄塔。ここからは若干残雪も目に付くようになります。日陰は雪も凍り付きアイスバーンになっています。しばらく暗い樹林帯の急坂に息を切らせると、四阿屋山神社の古びた社殿にたどり着きました。すでにたくさんのパーティが昼食の最中です。
四阿屋山神社からは急な露岩帯を山頂へと向かうことにします。雪の張り付いた急坂は鎖が張っていますがかなり滑りやすい登りです。ここからひと登りした狭い岩稜が目指す四阿屋山の山頂です。山頂は広く開け、正面には恐竜の背のような両神山の岩峰。その左手には秩父御岳山。その奥には白く雪を被った雲取山。振り返ると石灰岩の採石で山頂を変形させた武甲山がそびえています。低山にしてはなかなかの展望です。
狭い山頂では昼食の場所さえ確保できそうもありません。急かれるように山頂を後に、四阿屋山神社まで戻ることにします。鎖場の下りは、たくさんの人の列でひどい渋滞です。たどり着いた四阿屋山神社の傍らで、コッヘルを出し昼食としました。
昼食の後、福寿草の群生地に向かうことにします。四阿屋山神社の急な石段を下ったところが目指す福寿草の群生地。明るく開けた園地には早春の日を浴びて黄色い福寿草が大きな花を付けています。マイカーでやって来たのでしょうか、軽装にスニーカーの家族連れがベンチでお弁当を広げていました。
ここからは明るい雑木林の尾根道を下って行きます。しばらく下ると花菖蒲の園地にたどり着きました。目指す薬師堂はここからひと歩きです。
四阿屋山神社から少し下った雑木林の中に福寿草の群生地がありました。雪が融けて間もないこの時期、福寿草は春の光を一杯に受けながら黄色い花を開きます。他の花に先駆けて花を付けることにより、虫たちに花粉を運んでもらいやすくするためでしょうか。芽吹も始まらない雑木林で、鮮やかな黄色の花はよく目立つものです。