三角点は三角測量に用いる緯度、経度、標高の基本となる点です。見晴らしの良い山頂部などに設置されていることが多く、山頂などでよく目にする石柱としてお馴染みです。
日本で初めて本格的な測量を行ったのは歴史の教科書でもお馴染みの伊能忠敬と言われています。トランシットなどまともな機器などの存在しなかった寛政12年(1800年)ころ、奥州から蝦夷地太平洋岸をはじめとし全国の海岸周辺を測量した大日本沿海輿地全図を作成したと言います。
明治時代、測量は軍事的な目的から陸軍参謀本部の陸地測量部が実施するようになり、大正14年(1925年)には全国の5万分の1の地形図が完成しました。2009年に封切りされる映画「劒岳点の記」は、明治40年(1907年)、陸地測量部の柴崎芳太郎測量手の率いる測量隊が苦闘の末、北アルプスの劒岳に命がけで測量を行った実話をもとにした新田次郎の小説を映画化したもので、往時の測量技師たちの苦労と登山技術を垣間見るものです。
現在、三角点は国土地理院が管理して、1等三角点から4等三角点まで109,280の三角点があります。このほか本州太平洋側を中心に1300点の電子点があります。
1等三角点うち約半数は明治、大正時代に設置され、1等三角点の約4割は標高500m以下の低地にあると言います。
神奈川県には1等三角点が8、2等三角点が35、3等三角点が239、4等三角点が232あります。神奈川県内で最も高い三角点は丹沢山1567.0m、三角点が置かれた最も低い山は三浦市の岩堂山で82.1mに三角点が設置されています。
1等三角点は柱石の約3/4が地中に埋設されています。地表に出ている部分は1辺が18cmの花崗岩で、重さは90kgほどあると言います。上面には十字、側面には1等三角点などの文字が刻まれ、文字が刻まれた面が南を向くように設置されています。
明治、大正時代には人夫が石を背負い山頂まで運んだと言います。往時の測量は大変だったことが想像できます。
水準点は国道や主要街道沿いに約2km間隔に埋設された基準点です。これらを辿る形で水準測量が行われ、この路線網を水準網と呼びます。
全ての水準測量の基準となる日本水準原点は、東京都千代田区永田町の国会前庭洋式庭園内に設置されています。かつては参謀本部陸地測量部があったところです。
大正12年(1923年)の関東大震災で24.5000mから24.4140mに変更されました。
東日本大震災でさらに変更され現在の標高は24.3900mとなっています。
全国1300ヶ所に設置されGNSS衛星からの電波を受信する観測点。約20km間隔、本州太平洋側に多く設置されています。
5mのポールには銘板が設置され、基礎部には電子基準点付属標と呼ばれる金属標が埋設してあります。2004年からはGNSS連続観測システム(GEONET:GNSS Earth Observation Network System)が運用され地殻変動をとらえることに利用されています。
(注)GNSS全球測位衛星システム、GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムの総称です。
国土地理院では地理情報システム(GIS)の活用のため、インターネット上で自由に利用することが可能となる「電子国土」を実現しています。
基準点成果閲覧
基準点(電子基準点、三角点、水準点)の位置情報を利用できます。主に測量などで利用します。
国土地理院・電子国土
基準点成果閲覧
電子基準点の観測データ、基準点位置情報のオンライン配布
地殻変動の調査などに利用されます。
インテリジェント基準点
三角点の位置情報などが記録されたICチップが埋め込まれています。
コミュニケータを近づけると基準点情報を取得することができます。
uPlace(ユープレイス・ucode for Place identification)
2011年に発生した東日本大震災では東北太平洋側を中心として大規模な地殻変動が発生しました。
地震の規模は日本観測史上最大のM9.0、宮城県栗原市で最大震度7が観測されました。
最も変動の大きい牡鹿半島周辺では東側に6m以上の変動が記録されています。東北の太平洋側では大きな沈降が記録されています。
また関東の山地では隆起が記録されその影響は北アルプス周辺にまで及んでいます。これに伴い山の標高も変化しています。
山名 | 新しい標高 | 震災前の標高 | 変化 |
---|---|---|---|
筑波山 | 875.74m | 875.87m | -0.13m |
八溝山 | 1022.11m | 1021.84m | +0.27m |
焼石山 | 1547.35m | 1547.65m | -0.30m |
岩手山 | 2038.08m | 2038.09m | -0.01m |
五葉山 | 1340.43m | 1340.91m | -0.48m |
八甲田山 | 1584.61m | 1584.56m | 0.05m |
地形図や電子データの標高は震災後の標高に変更されています。データのデジタル化がなされた結果と言うことでしょう。
点の数 | 設置間隔 | 辺の大きさ | ||
---|---|---|---|---|
電子点基準点 | 1,318点 | |||
三角点 | 1等 | 974点 | 45km(補点は25km) | 18cm角 |
2等 | 4,998点 | 8km | 15cm角 | |
3等 | 31,701点 | 4km | 15cm角 | |
4等 | 71,607点 | 2km | 12cm角 | |
水準点 | 基準 | 84点 | ||
1等 | 13,339点 | |||
2等 | 3,309点 | |||
道路 | 1km |
参考資料:国土地理院ホームページ